4 ラーの鏡(2) [DQ2上]

4 ラーの鏡(2)


「ナナ王女ですよねっ!?」
 カインが、尋ねた。
「ああ、元の姿に戻れるなんて・・・・・・。もうずっとあのままかと思いましたわ。私はムーンブルクのフォルグ王の娘ナナ」
 ナナは、瞳を潤ませてそういい、こっくりとうなずいた。
「よかった!心配したんだぜ!」
 アルスも、嬉しそうに目を潤ませた。
「呪いを解いてくれてありがとう・・・・・・。アルス王子、カイン王子・・・・・・」
 ナナは、やっと聞き取れるようなか細い声で言うと、小さな肩でため息を吐いて、瞳を曇らせた。助かったことは嬉しいが、ハーゴンの魔物の群れに襲われたあの夜のことが、未だにナナの脳裏を離れない。
「でも、どうして子犬に・・・・・・?」
「それは・・・・・・もうご存知かと思いますが、ムーンブルク城はハーゴンの軍団に襲われ・・・・・・私は呪いで犬の姿に変えられてここに飛ばされたんです」
 カインの問いに、ナナは話し始めた。
 それはムーンブルクの壊滅の日の詳しい出来事だった。そして、フォルグ王が地獄の使いによって殺されたあとのことも話してくれた。
 狂ったように泣き叫びながらナナは逃げた。
 地獄の使いは、しつこくナナを追ってきた。
 何とか運よく地下室まで逃げて身を隠そうとしたが、すぐにナナはフォルグ王のところへ駆け戻ろうとした。そこへ地獄の使いがやってきた。ナナは魔法使いではあるが、まだ未熟で攻撃呪文の1つも使えない状態。修行用に使っているひのきの杖で殴りかかってみたが、勝てるはずもなく、逆に杖は地獄の使いの攻撃で壊れてしまった。
 そこへ、ひとりのムーンブルクの魔法使いが現れた。彼もまたハーゴンの魔物の群れと戦っていたが、中庭にいたフォルグ王やナナのことが心配になり、戻ってきたのだ。
 魔法使いは、愛用の杖を振りかざし、呪文を唱えながら必死に戦った。だが、魔法使いが攻撃するたびに、地獄の使いの呪文と武器による攻撃が、かわそうとしても何度も魔法使いの体に炸裂した。そして、魔法使いは倒れ、瀕死状態になった。実は、彼はアルスとカインがムーンブルクを訪れたとき、ナナがどこかの街にいることを教えてくれた魂そのものだった。
「さあ・・・・・・」
 地獄の使いはナナに向き直り、ゆっくりと近づいていった。
「もう逃げられんぞ・・・・・・!」
 ナナがそこまでの出来事を言うと、彼女は小さな肩を震わせて泣きだした。
 あの夜の惨状を思い浮かべると、泣かずにはいられなかった。目の前で、愛する父が殺された。多くの人々や魔法使いたちも殺された。さらに生まれ育った、城まで焼かれたのである。
 カインは、慰める言葉もなかった。
「くそーっ!ハーゴンめ・・・・・・!」
 アルスも、目を潤ませていた。
「それで、その後っていったいどうなったんですか?」
 カインが尋ねた。
「そうでしたわね・・・・・・」
 ナナは、気を取り直して、そのときの様子の続きを話し始めた。
 地獄の使いは、「お前は勇者の子孫・・・・・・だから念入りに始末しなくてはな・・・・・・くらえ・・・・・・!」と叫ぶと印を結んで、ナナが知らない呪文を念じた。
 すると、地獄の使いの全身が激しく震え、突然印を結んだ指先から、呪文の光が発せられ、その光がナナの全身を包んだ。
「きゃああああっ!」
 ナナは叫んだ。
 やがて、光が薄れ、ナナの姿は光と共に小さくなっていった・・・・・・。
「何!?」
 地獄の使いは予想していなかった光景に驚いた。地獄の使いはナナに即死の呪いを使ったはずだった。だが、ナナは子犬に姿を変えて気絶しているだけだった。
 よく見れば、この地下室には呪いを弱める目に見えない結界が張られていた。1度で殺せなかったことに地獄の使いはいらだっていた。だが、子犬になったところで、ナナには何も出来ないだろう。地獄の使いは言った。
「どこかこの近くの街に飛ばしてやる。そして犬の姿のまま、ハーゴン様による世界の破滅を見届けるがいい!」
 地獄の使いがまた謎の呪文を唱えると、子犬のナナの姿が光と共に一瞬にして消えてしまった・・・・・・。それを見届けると、地獄の使いは立ち去った。ナナは知らなかったが、瀕死状態の魔法使いはその様子を見ていることしか出来ず、やがて事切れた。
「それで、地獄の使いの呪文に呪われて、その結界とかいうやつのおかげで子犬に変えられちまっただけですんだのか・・・・・・」
 アルスが言うと、「ええ、たぶん・・・・・・」頬を伝う涙を拭おうともせず、ナナがうなずいた。
「気がついたら、もうムーンペタの、街の中にいましたわ・・・・・・今頃ムーンブルク城は・・・・・・。ああ、今は考えないことにいたしましょう。私もあなた方の仲間にしてくださいませ。ともに戦いましょう!」
「もちろんだぜ!そういえばこれで、俺たち勇者の子孫がそろったんだな!」
 アルスが言った。
「でも・・・・・・コレからどうしたらいいんだ?」
「もしかしてアルス、何も考えてなかったの?」
 カインが呆れていった。
「じゃあ、お前はどうすんのかわかんのかよ!」
「いや、その・・・・・・」
 そんな2人のやり取りを見て、ナナはきっぱりといった。
「アレフガルドへ」
「アレフガルド?」
 アルスが尋ねた。
「私たちの先祖の勇者は、世界に危機が訪れたとき、アレフガルドをまず訪ねたわ。子孫の私たちも同じようにアレフガルドを訪れるのよ。それにあそこはムーンブルクより歴史が古いし、何かハーゴンや魔物の情報が見つかるかもしれないわ」
「でも、確かアレフガルドにいくには船が必要だよ」
 カインが言い、「ムーンペタのどこかに船を貸してくれる場所があるの?」と首をかしげた。
「ちょっと遠いけど、ここからずっと北西に行った島に大きな港街があるわ。そこなら何とかなるはずよ。ただ、島までの道がちゃんとあるかどうか心配だわ。そこで・・・・・・空を飛ぶマントよ」
「何だそれ?」
 またもアルスが尋ねた。
「犬だったときに、街の大柄な男からウワサで聞いたんだけど、どこかの塔の中に、空を飛べるマントがあるらしいの。そのマントを身に着けていると、高いところから落ちたとき、少しだけ空を飛べるんですって。そのどこかの塔って、たぶん風の塔のことだと思うの」
「で、風の塔ってどこにあるんですか?」
 今度はカインが、尋ねた。
「ここから南東の方角、1度北上してから海岸沿いに回りこんでいく場所よ・・・・・・」
「よし、まずはそこへ行って、その空を飛ぶマントを手に入れようぜ。それから、ナナのいうとおりアレフガルドに行く船を捜そう」
 アルスが決断した。すでにアルスはパーティのリーダーとして行動力を現し始めていた。
 ナナは力強く涙を拭いて、立ち上がった。
 その瞳は、決意に燃えていた・・・・・・。

あとがき
ついにムーン王女登場です。
なぜ王女だけ犬にされてしまったのかは、とりあえずこんな形にしてみましたが、ホントかどうかはちょっと自信ないです。
いろんな解釈(呪いではなく別の相手からハーゴン側から身を守るために変えられた、とかは却下)、があると思うので、そのあたりはぜひ知りたいです。
次回は風のマント関係の話。
いよいよ勇者の子孫たちがそろっての旅が始まります。
※次回は8月1日更新予定です。
バイトのシフトにより変更の可能性があります。
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ともちん

読んでいて、私も涙目になりそうでした。
実際の設定かと思うくらいリアルに感じました。
伝説の勇者の血をひく子孫たちの新たな出発ですね!
続きを楽しみにしています(^^)
by ともちん (2012-07-16 05:36) 

あばれスピア

ともちんさん
こんばんは。
結局実際の設定って人それぞれで、色々あるんですよね。
難しいところです。
by あばれスピア (2012-07-17 00:05) 

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