17 夜明け [DQ1]

17 夜明け


 アルスが掲げた光の玉が光を放ち終わったときだった。突然、地響きがして、床が大きく揺れた。
「うわあっ!?」
 倒れそうになって、アルスは思わず宝箱のある棚につかまった。
 地震だった。地震はさらに激しくなった。
 大理石の壁や、柱に、鋭いひびが入ったかと思うと、音をたてて壁や柱が崩れ落ちてきた。
「あっ!?」
 アルスは慌てて光の玉を腰のポーチに入れて逃げた。
 アルスは必死に逃げた。
 右足の痛みとか体の痛みを気にしている余裕などなかった。
 湖も踊るように波打っていた。波頭と波頭がぶつかり合い、水の飛沫が飛び散っている。
 宮殿前の大きな大理石の橋をやっと渡ったとき、背後で轟音がした。
 あっと振り向くと、高くそびえていた宮殿が、大音響をたてて崩壊していた。
 さらに、巨大な地底の天井の岩盤も、湖や崩れ始めた宮殿の上に落ちてきた。
 アルスは地下6階に上がって逃げた。地響きがし、壁や天井が土煙をあげて崩れ落ちる。
 アルスはそれらの落下物をかわしながら、逃げた。
 さらに地下5階、地下4階、地下3階へと逃げた。
 こうして、急いで階段を上がっていき、何とか地下通路から脱出した。そして、アルスは、竜王の城の外へダッシュした。
 やっとアルスは竜王の城を脱出した。竜王の城は外観の1部の形を残して崩れていった。そのとき、東の空からゆっくりと太陽が昇ってきた。見る見るうちに海は太陽の光にキラキラ反射し、紺碧の海へと姿を変えていた。いつの間にか、澄んだ青空が広がっていた。こんな美しい空を見たのは久しぶりだった。海もとても美しい、穏やかな海だった。竜王の城の周囲の沼地は花畑に姿を変えていた。そしてアルスは深呼吸した。
 やったんですね!ついに竜王を倒したんですね!やっとアルスの胸に平和が訪れたことが実感として込みあげてきた。ついに光の玉を取り戻したんですね!アルスは光の玉にもう1度触れてみた。
 そして、竜王が倒れるときの、あの哀しい眼を思い出した。
 竜王の話では、竜王の一族はもともと人間を守る竜神として生まれてくるはずだったようだ。だが魔物となり、魔王として5年もの長い間、このアレフガルドを支配してきた。
 竜王は、光の玉は自分の祖母の竜の女王が命と引き換えにこの世に残したものだ、とアルスに言った。それがどういう意味なのか今のアルスにはわからない。だが竜王が言ったことも全部嘘ではなさそうだ。もし本当だとしたら・・・・・・魔王を倒すために神から授かったはずの光の玉をめぐって、勇者ロトの子孫と竜神の子孫が戦うことになってしまったということになる。さだめとはなんて不思議で皮肉なものなんでしょう・・・・・・。アルスは思った。そして、光ある限り、闇もまたある・・・・・・魔王が勇者ロトに言ったという、ロトの洞窟に刻まれていた言葉をアルスは思い出した。
 それにしても・・・・・・。
 竜王が哀しい眼で振り向いたあの時、竜王は何かを言おうとして喉を鳴らした。いったい、何が言いたかったんでしょう・・・・・・ふと、気になった。

あとがき
竜王の城の脱出の話です。
この話も書き直したところが何箇所かありました。
城が崩れる場面と、特に光の玉と竜王の一族関係です。
光の玉の話はこの1の世界の中で本当に大事な話なのではないでしょうか。
・・・次回、いよいよ最終回です。

※DQ2小説は9月3日更新
DQ1小説次回は9月3日に更新します(変更あったらまた連絡します)。
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ともちん

命がけの戦いの後も、竜王の様子を気に掛けることができるとは!
さすがは勇者だな、とそういった面でも感動しました。
戦いから、城を出るまで、夜を徹しているんですね。
by ともちん (2012-09-05 00:33) 

あばれスピア

ともちんさん。
竜王と勇者の関係と、3での竜の女王と勇者の関係は初めて知ったとき本当に驚きました。
こういった、実は必ずしもハッピーエンドではないところが、いかにもDQっぽいストーリーなのかもしれません。
ラストダンジョンなんで、1日がかりの行動です。
by あばれスピア (2012-09-05 23:21) 

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