この道わが旅 [DQ2下]
この道わが旅
ムーンブルク西のほこらから、廃墟となった城へ進んだ。
勇者の子孫たちは、柔らかい地面を1歩づつ踏み出しながらこの城に向かった。
今日から、季節は春の盛りを迎えようとしていた。
ナナが16歳の誕生日を迎える前日にハーゴン配下の魔物の群れにムーンブルクが襲撃されてから、ちょうど丸2か月が過ぎようとしていた。
勇者の子孫たちが、シドーを倒してから、1日が経過しようとしていた。
シドーを倒した後、勇者の子孫たちは、人々の待つ、ベラヌールにその日の朝凱旋した。
空には白い雲がわき、街は春の光にあふれていた。
ベラヌールは大騒ぎだった。街の人々は勢いよく花火を打ち上げ、また港に停泊している船の船乗りたちは一斉にドラを鳴らして、新たなる英雄たちを歓びの声で迎えてくれた。
そして、すぐに「勝利」の報告を知らせる手紙が、ムーンペタに向けて送られた。
さらにその知らせは、ムーンペタからまた別の手紙によって、ローレシアとサマルトリアに運ばれていく。
凱旋した勇者の子孫たちは、ベラヌールの教会の祭壇に跪き、深い感謝の祈りをささげた。
そして、5時間後、勇者の子孫たちは街の人々と別れて、ベラヌールを出発した。
彼らは、ベラヌール北のほこらから、旅の扉でムーンブルク西のほこらへ飛ぶと、ナナのどうしても行きたい場所・・・・・・ムーンブルクへと向かうためにやってきたのだ・・・・・・。
城は、アルスとカインが以前来た時と同じように荒れ果てたままだった。
かつての謁見の間まで来た。だが、以前と同じだった。
勇者の子孫たちは、心の中で、ムーンブルクの人々の冥福を祈り、手を合わせて人々に勝利を報告した。そして、謁見の間の玉座に、花を置いた。花は、かすかに風に揺れた。
どうやら春のさわやかな風が、城の中までわたってきたようだ。
その時だった・・・・・・。
「わしはムーンブルク王の魂じゃ・・・・・・。わしに話しかけるのは誰じゃ?」
勇者の子孫たちは、ふと顔を上げた。
風に乗って、どこからともなくのフォルグ王の声が聞こえてきたような気がしたのだ。
「お父様っ!私よ、ナナです!」
思わずナナが叫び、勇者の子孫たちは、しばらくその場にたって、その声を聞いていた・・・・・・。
「気のせいか、懐かしい声が聞こえるような・・・・・・。しかし、そんなはずは・・・・・・まさか・・・・・・!?」
なんと、アルスたちの前に、フォルグ王の姿が浮かび上がった!
「見えるぞ!お前はわが娘!」
「お父様っ!」
ナナはフォルグ王に抱きつこうとした。だが、フォルグ王の体をすり抜けてしまった。やはり魂の存在らしい。
「おうおう、そのように立派な姿になって・・・・・・。そなたたちの働きは魂となったこのわしにも感じることができた。本当によくやったな。これで何も思い残すことなくこの世を去れるわい」
「お父様・・・・・・私・・・・・・」
「悲しむでない。わが娘よ。お前はこんなに立派なことを成し遂げたんだからな。それに力強い仲間もいるではないか!アルス殿。これからもナナのことをよろしく頼みますぞ」
「・・・・・・はい」
アルスは力強くうなずいた。
「さあ、わしは行かなくては・・・・・・。せっかく見えた天国への扉が閉じてしまうわい」
「お父様。私きっとムーンブルクの城をたて直してみせます。だから・・・・・・」
「分かっとるよ。お前はわしの娘じゃ。頑張るんだぞ。わしはいつも天国から見守っておるからな。では、お別れじゃ。おお、見える・・・・・・あれは天国への扉。ありがとう、どうか元気でな・・・・・・」
こうして、フォルグ王の姿は消えていった。
アルスとカインは、眼に涙をにじませながらナナに視線を転じた。
ナナはアルスとカインに背を向け、フォルグ王が消えた玉座の正面に座り込んでいた。アルスとカインはナナに歩み寄る。
「お父様が、・・・・・・最後に来てくれたわね。シドーが滅んで・・・・・・これで、お父様も、きっと」
ナナの肩が、揺れた。
アルスは、そんな肩を抱く。カインはその反対側から、穏やかに頭に手を置いた。
涙で、顔を歪めたナナを、アルスとカインは優しく包み込んだ。
「喜んで・・・・・・くれる・・・・・・わね!」
答えず、カインは頷いた。答えず、アルスは城の窓から空を見上げた。
あとがき
今回はゲームのようにローレシアで終了ではなく、途中行くことができるムーンブルクで終わりにしました。
この展開は、実はwiiでDQ2をクリアした時に初めて知りました。
少しの間でしたが、救いがあってよかったです。
ムーンブルクで終わって、ホッとするラストでした。
王の天国へ行くシーンは本当に救いですね。
WiiのDQ2をプレイしたくなりました。
by ともちん (2013-12-05 00:48)
ともちんさん
こんばんは。
ラストでホッとされてよかったです。
全然わからずに天国へ行くのは寂しいですし。
wiiのDQ、移植ですがもしプレイできるならぜひ。
by あばれスピア (2013-12-06 00:20)