８ イシス（１）

８　イシス（１）

　アッサラームで新しい武器としてアルスとミゼラは鉄のオノを買った。ノアニールで買った鋼鉄の剣がダメになってしまったからだ。またローザは毛皮のフードを装備することにした。アルスたちは街を南へ向かって砂漠へ入ると、イシスの城下町があるという西のオアシスを探した。アッサラームを旅立って２日目に砂漠に入ったが、エルトが熱病に倒れてしまった。３日目にようやくイシスのオアシスを発見し、めざす場所はオアシスの南西に位置していた。城下町の宿屋で宿をとり交代でエルトの看病をすると、すぐに特別な薬草が効いて熱が下がりエルトの意識が戻った。アルスとミゼラはローザにエルトを任せて城の女王ジュリエッタを訪ねた。アルスはピラミッドにあるというお宝のことを尋ねた。
「そうですか。そのようなものがあるとは知りませんでした。ピラミッドは代々我が王家の墓ですが、ここ１７年ばかり使われておりません。それにバラモスの出現以来、魔物の巣窟になっているとか・・・・・・。でも、バラモス討伐のお役に立つのであれば、どうぞお持ちになってください・・・・・・」
　さらにジュリエッタ女王はいった。
「私にできることがあるなら、遠慮なくなんなりと申し出てください・・・・・・」
「仲間の一人が熱病にかかってしまって宿屋で寝ているんですが・・・・・・」
　アルスがピラミッドに行っている間エルトを城で預かってくれるように頼むと、ジュリエッタ女王は微笑んで快諾した。
　砂漠に道らしい道はなかった。だが、アルスたちはピラミッドがあるイシスの北をめざしていた。
　途中、魔物が襲ってきた。砂漠をずっと進んでいくと、突然砂の中から地獄のハサミが襲撃してきた。地獄のハサミは緑の甲羅におおわれていて、ミゼラの鉄のオノによる直接攻撃でもすぐには倒せなかった。
「ギラ！」
　アルスの呪文で小さな炎の波が敵を牽制した！
「ベギラマ！」
　さらにローザが唱えるとその周囲に大量の炎が出現した！
「GO！」
　ローザの掛け声で炎は地獄のハサミに炸裂した！地獄のハサミは炎に焼かれて青白い光に包まれて消えた。
　そしてイシスを出発して６時間後の夕方、夕日に染まった砂漠を進んでいくと、イシスの大砂漠に立つ、地平線に２等辺３角形の側面を持つ巨大な４角錐のピラミッドが聳えているのが見えてきた。アルスはイシスで聞いたさまざまな話を思い出した。ピラミッドは何万個もの巨大な長方形の石を四方から天に向かって階段状に積み上げた建造物で、イシス王家の壮大な墓だった。亡くなった国王とともに多くのお宝も埋められたらしい。だがピラミッドを荒らす盗賊団は後をたたないという。
「この中にお宝が？入り口はどこかしら」
　ミゼラが辺りを探しているときだった。
「こっちだぜ」
『ええっ！？』
　いきなり男の声が聞こえてアルスとミゼラとローザは声をハモらせ驚いた。
「よっ。遅かったな。待ちくたびれちまったぜ！」
「・・・・・・シークス！」
　そう、それはロマリアで別れた一匹狼の盗賊、シークスだった！シークスの登場にミゼラは思わず声をあげた。
「おお？相変わらずいい女だなぁ、ミゼラ。惚れ直すぜ！」
「ふん！あんたに用なんかないわ！」
「つれないこと言うなよ、ミゼラー。実を言うとな・・・・・・あんたのことが、忘れられなくってなぁ」
　２人の様子にローザが笑い乍らいった。
「言うわね。よかったねー、ミゼラ」
「バカッ」
　ミゼラは思わず小声でローザをたしなめた。
「あっ、エルトってやつがいねぇなぁ。・・・・・・どうした」
「イシスへ向かう途中で熱病になって倒れたんだ。今城で預かってもらってる」
　シークスがメンバーが変わってるのに気付き、アルスが説明した。
「そうかい。ちょうどいい。俺が仲間になってやろうじゃねぇか」
「お断りよ！・・・・・・あんたなんか」
　シークスの申し出をミゼラは突っぱねた。
「あっ、そ。でも大変だぜ？ピラミッドの中を探すのは。なんてったってお宝たくさんって噂の墓だ。とんでもねぇ罠や仕掛けがゴマンとあるぜ」
「えーっ？そうなのー！？」
「ま、盗賊シークス様がついてりゃあ安心だがな」
　ローザの言葉にシークスは答え、ため息をついた。
　シークスは半ば強引に仲間に加わった！だが、その頂上に立って埋葬殿に入っていくアルスたちを冷酷な目で見おろしている紫の鱗に５つの首を持った巨大な竜がいた。キングヒドラだった。
　アルスたちは入り口の大きな階段をのぼると、石畳の床のひんやりとした埋葬殿の廊下を奥へ進んだ。なんと、あちこちに置かれた宝箱はいずれも空っぽで、もうすでにほかの盗賊団に奪われてしまったようだった・・・・・・！どれも宝箱は石でできていて、重そうで簡単には開けられなさそうだった！

（続く）

※次回は７日更新です。