魔法使いの旅立ち [DQ3-1]

魔法使いの旅立ち


 ・・・・・・それは17年前のある朝だった。
 ロマリアの城下町の城壁の門前に生まれたばかりのかわいらしい女の赤ん坊が捨てられていた。産着には曰ありげな美しいルビーのペンダントがはさんであり、それをちょうど旅から帰ってきた老人が見つけた。老人は赤ん坊を抱きあげた。
「本当の親に捨てられてしまったのか。かわいそうに」
老人は赤ん坊にローザと名付、同じロマリアに住む姉の老魔導士に預けて育てさせることにした。老人はロマリアのスパイであり、自分の家を留守にすることが多かった。
 ローザはルビーのペンダントをおもちゃ代わりにして育ち、片時もルビーのペンダントを離そうとしなかった。
「ローザの体を流れている血とルビーのペンダントには一般人には測り知れない特別なものが存在していて、きっとそれは出生の秘密に深くかかわっているかもしれんな・・・・・・」
時々ローザの様子を見に来乍ら老人はずっと思っていた。
 ローザが5歳のときだった。魔導士の家のある裏通り一帯がカンダタ率いる盗賊団に襲われてしまい、金貨や宝石、美術品などと一緒にルビーのペンダントも盗まれてしまった。当時のローザの衝撃は尋常ではなく、しばらくローザは立ち直れず泣いてばかりだった。
「あのルビーのペンダントはローザとローザの親をつなぐ唯一の手がかりじゃ。アレがないと永遠に彼女たちの糸が切れてしまう・・・・・・」
老人はペンダントを取り戻そうと決意し、任務のかたわらカンダタを追跡するようになった。
 だが、ローザが7歳のときだった。老人がカンダタのアジトの情報を手に入れ、ロマリアへ帰る途中のことである。老人はバラモスの出現とともに出没するようになった魔物の群れに襲撃されてしまい、瀕死の状態でロマリアに運ばれてきた。そして、「カンダタのアジトはカザーブの村のはるか西、シャンパーニの塔・・・・・・」とローザに言残して息を引取った。
 その後も、ロマリア王の命令で何度か討伐隊が派遣されたが、後1歩というところでカンダタを捕まえることは出来なかった。作戦はいいところをついているが、毎回ツメが甘いのである。
「ロマリアの兵士には任せておけないわ。こうなったら私が取り返さなくちゃ」
ローザは、自力でペンダントを取り戻す決意をし、老魔導士に呪文を教わるようになった。その期間は10か月間に及んだ。
「ほら、もっと集中せんか!」
老魔導士は地元では高名で厳しい魔導士だった。呪文は毎日朝から晩までずっと教わった。だが、呪文自体が好きだったローザは確実に成長し、簡単な呪文は唱えられるようになった。
 そうして、老人に拾われた日に、ローザは17歳の誕生日を迎えた。自身の成長からローザは誕生日に旅立ってカンダタを倒しに行くことを決めていたが、同時にまよってもいた。
「私が旅立ったら育ててくれたおばあさんが一人になってしまう。カンダタは盗むだけが得意じゃなくて、戦うのも得意らしいし。私一人でカンダタに立ち向かえるかしら?」
 ところがそれから凡そ1か月後のことだ。近所の宿屋に珍しく若い旅人の一行が泊まって今朝旅立ったという。ローザは顔見知りの宿屋の主人に話を聞いた。
「なんでもカンダタのアジトを探してカザーブへ旅立ったらしいですよ」
「カンダタの?」
ローザは、居ても立ってもいられなくなった。その日家に帰ると、老魔導士が待っていた。老魔導士はローザが悩んでいたことを知っていたのである。
「・・・・・・これを持っておいき。おまえはおまえのやりたいことをやれ」
老魔導士は、愛用の杖を授けた。遠慮なく旅立つよう勧めてくれた・・・・・・。
 こうして翌日、準備を整えたローザは、若い旅人の一行、つまりアルスたちのあとを追うことになったのだ。
「カンダタを倒そうとするなんて、どんな人たちかしら?」
 カザーブへ向かうローザは、不安と期待が入り混じった状態でどんどん進んでいった。

あとがき
ローザの旅立ち部分をもう少し詳しく書いてみました。
ロマリアで暮らしてたローザのことが少しでもわかるようにしました。
彼女の旅立ちってこんな感じだったんですねぇ。
※DQ3小説第2部は2015年4月開始予定。
しばらくお待ちください。
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ともちん

ローザの生い立ちに切ない気持ちになりました。
第二部は来年ですね。今までのお話を
時折読ませてもらいながら待っています。
by ともちん (2014-12-05 03:22) 

あばれスピア

ともちんさん
こんばんは。
彼女にはぜひ幸せになってほしいですね。
今回3は出たとこまかせなところがあったんで、ちょっと充電期間ですね。
うまい機会になればと思ってます。
by あばれスピア (2014-12-05 22:06) 

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