2章ー5 エンドール(2) [DQ4-1]

2章ー5 エンドール(2)

 翌朝、アリーナたちは城に登った。入り口の扉で番をしていた兵士らに来意を告げると、一人が進み出て、王の許に案内してくれると言う。武術大会の客は多く、その間にも、城の左右の回廊から、次々に奥のコロシアムに向ってゆくのだった。
 番兵に続いて入った城の内部はがらんと広く、空気がひんやりとしていた。丹念に彫刻された壁の上方には、エンドールの栄光の歴史を絵物語風に綴る巨大な織物がかかっている。柱という柱は、みな打ち伸ばされた銀を張られて、ぴかぴかと輝いている。床の通路の部分には、異国調の絨毯が敷詰めてあった。
「フム。城の守りの固さはそれだけ外敵が強いという事。平和なわが国と違いこの大陸の国々はいろいろといさかいがあるようですな」
 ブライが言った。
 サントハイムのお城は可愛い感じだったけど、とアリーナは考えた。このお城は、強そうな感じね。やっぱり、武術大会を、開くだけの事は、あるわ!
 案内する兵がいることが、そのまま、客人の身分を示すのかもしれない。通りすがる家臣、メイド、召使などは、みな彼らを見ると、片隅に並び、恭しく頭を垂れ、あるいは膝をかがめて挨拶をした。
 彼らは広い石階段を昇り、2階の、王の謁見室に辿りついた。謁見室には国王と姫、大臣と兵士長が、控えている。
 3人が王のいる階の下の床に畏まると、「おお、よくぞ来た!」王は玉座から立って来て、「其方らの事は、既にサントハイム王より聞いているぞ。世界の行末を案じ、力試しの旅とはまことに感心なり。そのような頼もしい娘御とは、どのような女丈夫かと待ちかねておったが・・・・・・いや、驚いたな、モニカよ。そなたと年頃も変わらん、あどけない姫御前であられる」親しみを込めてアリーナの手を取り、階を昇らせた。
 もう一つの玉座からは、ひ弱そうな娘が立上り、よろめく様に会釈をする。
 と「娘のモニカじゃ。愛想がなくてすまん。今、ちと、加減が悪いんだ」王。
 モニカはこれを聞くと、きっと顔をあげて、父王の方を向き、何か言いたげに唇を震わせた。だが、結局は、顔を背け、倒れ込むようにして玉座にかけ直してしまった。
 あの姫はたぶん私と同い年くらいね。随分ひ弱そうだけど。アリーナは正直に思った。
 王は「あいすまん。隣国の姫をお迎えしたんだから、本来ならば、式典を催さねばならんし・・・・・・其方のために部屋を設えねばならんが・・・・・・今は大会のさなかでもあり、当方はいささか取り込んでおって」と顔を赤くした。
 アリーナは「ええ、結構です。特別扱いはいりません。私は戦いに来たんですから。取りあえずご挨拶のために参りましたが、差支えなければ、これにて、会場のほうにご案内いただければと思います」とはきはきと言った。
 王は「そうか。では、そうなされい。御健闘を祈る」とホッとしたようにうなずいた。
「はい」
 アリーナは会釈して下ろうとすると大臣が言った。
「全く我が陛下はとんでもない約束をしたもんです。姫の話を聞いてやってくだされ」
 ふとアリーナはモニカを見た。確かにアリーナは、モニカ姫の妙に拗ねた態度が気にかかった。
 すると、モニカは雷にでも打たれたかのように顔をあげた。
「・・・・・・アリーナ姫さま・・・・・・」
 泣きじゃくるような声をあげ玉座から立上る。王は慌てて、押しとどめようとしたが、娘は、ますます声を嗄らして叫ぶのだ。
「・・・・・・お父様がみなに約束したため、私は、武術大会の優勝者と結婚しなくてはなりません。でも、もし、優勝者が女の人だったら、無理な結婚をしなくてもすむでしょう。どうか、お願いでございます。どうか武術大会に出てくださいまし!アリーナ姫さま、どうか、勝ってくださいまし。モニカを救ってくださいまし。私は自由に生きているあなたを羨ましく思いますわ」
 娘を抱き乍ら、「・・・・・・モニカ、すまぬ。ああ。わしはどうかしていたんじゃ。そこでわしからも、頼みがあるんじゃが、アリーナ姫。武術大会で是非ともどうか、きっと優勝してくれい!・・・・・・実はわしも、今では後悔をしているんじゃよ。アリーナ姫どうか頼んだぞ」王も声を震わせる。
 大臣が近づいてきて、「近頃このエンドールにも魔物どもが出るようになりましてね。それで陛下は強い者たちを集めるつもりで武術大会を開く事にしたんです。しかしこのままでは、デスピサロとかいう流れ者が優勝してしまいそうなんですよ。これがまた、悪魔のように強いんですが、それは不気味な男なんで御座います。人間とは思えないほどとてつもなく強くしかも相手の息の根を止めるまで戦いを止めないんです。これまで5人もの選手が、瞬きするほどの間に、デスピサロに殺されてしまいました。彼奴と手合せをされては、選手という選手が皆殺しにされてしまいますものですから、急遽ルールを改めまして、5人勝ち抜いた方に決勝に進んでいただくようにしたんです。何しろ、そうでもしなければ、まるで、強い者を集めて葬り去っているような具合になってしまいましたものですから・・・・・・もし武術大会に出るならデスピサロという男に十分気を付けて下さい」茫然とするアリーナの耳に早口で囁いた。
 アリーナは胸騒ぎを覚え、黙りこくっていた。
 そしてアリーナは「・・・・・・陛下直々の願いを断るわけにはいかないわね。兎に角、武術大会で、私が、優勝すればいいんでしょ?簡単じゃない」と微笑んだ。
 モニカは「ああ、アリーナ姫さま。・・・・・・どうか、気を付けて」と両手を胸元で握りしめた。
 王が「其方だけが、頼みの綱じゃ。さぁ、娘や。我等も急ぎコロシアムに参ろう。露台から、アリーナ姫を応援するんじゃ!」と言った。
(続く)

※次回は6日更新です。
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ゲーム

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。