2章ー6 主なき城 [DQ4-1]

2章ー6 主なき城


「ルーラ!」
 ブライはアリーナとクリフトの手を取って呪文を唱えた。3人は上空を飛び、一瞬のうちに故国サントハイムの城に戻った。
 辺りは静まりかえっていた。城は空だった。
 ブライが沈鬱な顔付きで、「これは奇怪な!一体どうしたというんじゃ!姫様が御無事だったことがせめてもの救いか。しかし奇怪な・・・・・・」低く囁いた。
 アリーナは、「お父様に優勝したって私お知らせに来たのよ。なのに?お父様・・・・・・どうしていらっしゃらないの?」うつろな声で呟いた。
 いらっしゃらないの。・・・・・・。
 アリーナの叫び声は、がらんどうの謁見の間に長々と谺して、妙に寂しく、不安げに響くのだった。
 そこには、誰もいなかった。誰一人。
 クリフトが「みんな、どこに行ってしまったんでしょうか・・・・・・?おーい!」と言った。
 しかし、返事はなかった。
 3人は虚しく、城中を駆け回った。まだ修理されていないアリーナの部屋の蹴破られた壁の穴から屋根に降りると、猫が、死物狂いで駆寄って来て、アリーナの胸に飛付いた。
 アリーナは猫を抱きしめ、「ネコのことばがわかれば手がかりもつかめたのに!お父様・・・・・・」その顔に頬擦りした。いつもならば、過剰なスキンシップに嫌がって逃げ出す猫が、黙ってされるままになっている。たった1匹だけ取り残されてよほど心細い思いをしたらしい。
「にゃんにゃんにゃん!」
 猫が火でもついたように騒ぎ、アリーナの鎖帷子に爪をたてた。
 アリーナは猫を宥め乍ら、「よし、怒らないで。脅かしてごめんね」暫くじっと考えていたが、やがて、きっぱりと顔をあげた。
 アリーナは「ここにいても仕方ないわ。きっと、この謎を解くための鍵が、世界のどこかにあるはずよ。私は行くわ。もう1度。・・・・・・あなた達はどうする。ついて来る?」と言った。
 クリフトは「勿論ですとも!姫のいらっしゃるところならば、このクリフト、地獄の果までも、お伴しますっ」と拳を固めた。
 アリーナは、「大げさな人ね。じいは?」ようやく笑顔を取戻した。
「ほっほっほ。わしが行かないと、お困りじゃろう?」
 アリーナは「そうね。来て欲しいわ。苦労をかけることになると思うけど。来てくれるとありがたいわ。私一人じゃあ、何も出来ないんだから」とうなずいた。
 ブライは「姫様。おとなになられましたな」と目を細めた。
「そおかしら?」
 アリーナは照れたように頭を掻き乍ら、今はもう落ち着いた猫を下した。
 それから、立上って、ゆっくりと周囲を見渡した。
 生れた時から暮らした城だ。懐かしい、馴染んだ、どんな隅々までも知り尽した城だ。だが、今、無人のそこはあまりにも辛く、寂しく、まるで見知らぬ場所のように余所余所しかった。
 もう未練はなかった。
 アリーナは深呼吸し、可能な限り明るい声で、高らかに宣言した。
「それじゃ、お母様、行ってきまーっす!!」

 サントハイム王の 見た夢とは・・・・・・?
 姿を消した デスピサロとは・・・・・・?
 そして サントハイムの人々は
 いったい どこに行ってしまったのか?
 その謎を 探るため
 再び アリーナ姫達は
 旅に 出たのだった・・・・・・

あとがき
2章ラストです。
私が実際にプレイしたのはリメイク版。
幼少期は親がオリジナル版をプレイしていたのを横で見ていましたが、普通に無音で怖いって思ったのを覚えています。
そして旅立つしかないこの心境。
なんとも言えないラストだなぁといつも思います。
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