戦士ライアン

戦士ライアン

　バトランドの戦士ライアン。彼はバトランドの国王からの信頼の厚い人物だ。そんな彼は旅に出るまでどんな人物だったのか。
　現在のライアンは王宮では３番隊の隊長を務めていただけあって、その剣術は超一流だ。尤もバトランドの王宮の戦士たちは、隊長を務める様な戦士となると皆一流以上の剣術の達人となる。そんなライアンだから、彼の父親から鍛えられていたと思われるかもしれない。
　だが違う。ライアンの父親は、いや家族は既に亡くなっている。幼少期のころに。
　ライアンの家はバトランドの城下町のはずれで、鍛冶屋をしていた。彼の両親も２人の兄たちも仕事を手伝っていた。だが、ライアンが３歳になるかならないかのころ、仕事場に火事が出てしまい、みんな、その責任を取ろうとして火に巻かれてしまった。その後の調べで、火事は家族のせいではなく、客の悪戯だったらしいことがわかったが・・・・・・結局その客は、予想以上の火に驚いて逃げ出し、どこに行ってしまったか、最後までわからなかった。
　家族が亡くなり、最初は街のひと達が面倒を見てくれた。さすがに一人で生きていくには幼すぎる。ひとりで暮らすようになったのは、１０歳の時だ。当時のライアンは相当の悪ガキで、いつも元気一杯のわんぱくな少年に成長した。よく近くの小さな洞窟に入って、探検ゴッコをして遊んだものだった。生活は、山に入って茸を採ったり、鳥を射ったり、おとなの狩人たちの案内をしたりもした。・・・・・・そんなことばかりやっていたおかげで、現在のライアンには大した学歴がない。城下町での暮らしだったが、そんなに裕福な生活だったわけではない。幸いにも城下町のはずれの家だったので、何とか大きくなったライアンでも生活することが出来た。
　そして１４歳のある夏のことだ。国王の一行が鹿狩りに山へ向かったが驟雨にあい、道を失ってしまった。ライアンは、仕掛けた獣の罠が流されないかどうか見回りに出ていて、偶然、彼らと出会った。道を案内すると、王が言った。
「ライアンと言ったか。案内、感謝する。そこで褒美をあたえよう。城までくるがいい」
　ライアンはまだ１度も城に入ったことがなかった。好奇心にかられて、数日後ライアンは城に向った。それ以来、実家には戻っていない。
　城の中は何もかもが珍しく、王宮の人々は皆優しかった。料理は美味しく、寝床もフカフカだった。城での生活に慣れてきたころ、ライアンは王宮の人々に頼んだ。
「何か働かせてください」
　元々じっとしているのは性に合わなかった。そこで・・・・・・城の馬の世話を手伝うことになった。
　馬のために飼い葉を運んだり、毛を梳いたり。来客で別の国の姫などが訪問してきたときは、乗り方を教えたり手綱を引いたりもした。姫達が簡単な乗り方が出きる様になった時はライアンも嬉しかった。元々、ライアンは馬に限らず動物は皆好きなのだが。
　『のろまデカ』『のっぽのライアン』『山の師匠の坊や』は、危険や困難を恐れず気が大きくて小さいことに拘らないバトランドの男たちに、愛され、大事にされた。ライアンは自分の体験から、特に野山のことに詳しかった。ライアン少年は、当時から力は普通の大人と同等の強さがあり、滅多にへこたれはせず、経験から天気が読めたり、動物や虫、植物の名前を言い当てたり、王宮の人々にはまるで魔法に見えるらしい知識を持っていた。彼は人気者だった。将来は王宮の戦士になりたい事を聞くと、当時の戦士たちは、彼の所属を奪い合って、時には陽気な賭け事も繰り広げられた。みんな親切で、温かかった。
　ライアンは元々の実力の賜物もあって、鍛冶屋の生まれであったにもかかわらず、あり得ない速さで王宮の戦士の一員となった。国王が、その屈強な肉体と聡明で思いやり深い性格を見抜き、ことあるごとに彼を抜擢したからだ。
　戦士になると、彼は当時の隊長から剣術を学んだ。王宮での口のききかたや優雅な立居振舞も仕込まれたが、なかなか身につかなかった。
　こうして王宮の戦士となったライアンだが、彼はいつも「自分は特別な階級ではなく民衆側の人間である」と考えて行動している。
　その方が民衆側の考え方や意見がよりわかりやすくなるし、民衆と同じ目線で物事を考えられると思うからだ。数が多いわけではないが、この姿勢の御蔭で、多くの人が救われている。イムルの村でゆくえ不明になったこどもを探しに出かけるまで、彼はそんな日々を過ごしていた。

あとがき
ライアンの旅立つ前について書いてみました。
昔オリジナル版を親がプレイしていた時はライアンが優秀な戦士だとは知らずにいました。
自分でリメイク版をプレイして、やっと設定がわかったって感じでした。
それにしてもそれまでずっと４コマでのござる口調に慣れていたからか最初はちょっと慣れなかったり。
今はリメイク版こそが正しいって思ってますけどね。