4章ー4 ハバリア [DQ4-2]

4章ー4 ハバリア

 ミネアが素早く勘定を済ませ、マーニャの皮のドレスを引いた。マーニャはうなずき、無言のオーリンの肩に手をかけた。
「行くわよ、オーリン。宿屋を探さなきゃならないわ」
 宿屋を決めて荷物を置くと、港に別の国から作物を運んできた農夫らしい太ったのが、「オラあ、好きな子ができただ。絶対嫁っコにもらって帰るだ。どこの子かって?カー!聞くなって、こっぱずかしい!酒場のジルって子だ。ひゃー」恥ずかしそうに言ってるのが、隣の部屋から聞えてきた。
 苦笑交じりにマーニャが呟くと、「気の毒にね。ジルには結婚願望がないそうよ」ミネアが「あら、そうだったの?」と小首をかしげた。
もう夕方が近かった。マーニャたちは、ぶらぶらと波止場に行ってみた。茜から淡紫まで、何色ものヴェールを重ねた踊り子の衣裳のような雲の間を、潮の香りが吹抜て行く。
 オレンジ色の三角波の打寄せるドッグに、でかい帆船が停泊している。船乗りが、荷物を積込んでいる。
 もっと船のそばまで行ってみた。
 食料品が、衣類が、なにかの武器らしい立派な箱が、滑車にかけられた縄で持ち上げられ、陸に移されている。日暮までに、仕事を一段落させようと企んでいるらしい。調子はずれの濁った太い声をあげる男達の顔は、陽に灼けている。
「エンドール行の定期船だったな」
 ドッグを出て教会の近くの桟橋を歩いているときにオーリンが呟くと、桟橋の端に座って、足をぶらぶらさせていた老人が、聞きとがめて、顔をあげた。
「お前さん、知っておるんかね、エンドールを」
「行ったことはないが」
 老人はまた海のほうに、「そうかね。この海の向うエンドールには大きなコロシアムがあってのう・・・・・・。わしも若いころ、コロシアムで戦ったもんじゃ。あの頃が懐かしいのう・・・・・・」瞳をさまよわせた。
 街の船乗りにも話を聞いた。
「キングレオの国王陛下が代ってから港の取締が厳しくなってな。船に乗るための乗船券が中々手に入らないんだ」
「前から気になってたけど国王陛下が、代ったってどういうことかしら?」
 マーニャが言った。夜になったので、マーニャ達は酒場へ行くことにした。途中、出会った男からこんな話を聞いたからだ。
「何せ、今乗船券をもっているのは、国王陛下が代る前に手に入れたひとたちばかりです。新しい国王陛下は、とても厳しく若しかすると3日後にでる船が、最後の船になるかもしれません。だから、船にいっぱいに荷物を積んでゆくらしいですよ。全く、船乗りたちもたいへんですね」
「最後の船?どうしてっ?」
ミネアは尋ねたが男は答えなかった。酒場ならもっと詳しい人がいるかもしれない。予想通り酒場は大勢の客でにぎわっていた。酒場のど真ん中でジルはあの農夫と一緒に楽しそうに踊っている。マーニャ達は酒場にやってきた客の何人かに話を聞いてみた。この街からはエンドール行の船が出ているらしいが、エンドールはどんな国なのだろう。
「・・・・・・なんでも、エンドールで行われたおよそ1か月前の武術大会では、どこかの国の姫殿下が、優勝したそうです。いやはや、此の頃の女は、強いですね。わたしは、かないませんよ。でもその殿下が試合のあと自分のお城に帰ってみると、お城は、もぬけの空だったとか。不思議なこともあるもんですなあ」
 緑の帽子をかぶった商人の男は口を開けて笑って見せてから、マーニャとミネアの視線に気が付いて、慌てて首を竦めた。
「お城の姫殿下が武術大会で優勝したですって?そんな逞しい殿下がいるなら是非一度、会ってみたいわね」
「なんなのかしら?世界中で不思議なことが起っているのね」
 荷積みを監督しているらしい船番の兵士に、煙草をやって聞いてみた。バルザックらしいのが船でどこかに行ったかどうかまでは、結局最後までわからなかった。船は、たいそう繁盛しているようだ。それだけ、この大陸から逃出そうとしているものが多いのだとすれば、人間も同じくらいには、時の流れってものに敏感なのかもしれない。マーニャとミネアはそっと目配せをしたが。マーニャたちはキングレオの国王陛下が代ったことについて聞いてみた。
「へぇ、あんたら、知らないのか」
 兵士は目を瞬かせ、小声になった。
「これはあくまで、風の噂ってやつだが。キングレオ城では、なんかあったらしいんだ。ここキングレオは平和な国だったんだが、前の国王陛下は、どうも、突然亡くなってしまってな。革命だか、反乱だか知らないがな、後継の息子は自分が陛下にならず血の繋がりのない男を新しい陛下に任命してしまったんだ。今度王位におつきになった男ってのは、そりゃあケチでさ。それ以来この国は荒れ放題さ。やってらんねぇよ、全く・・・・・・おい、ここだけの話だよ?」
 と、「わかってるわ」マーニャ。
 と、「私達は、城のものではない。安心しろ。では新しい国王陛下の名前は?」オーリン。以前コーミズでも「キングレオの国王陛下が代ってから税金の取り立てが厳しくてのう。こんな夜更けまで働かねばならん。死んでしまった先代の国王陛下は、こんなことさせんかったのにのう」と村の農夫がぶつぶつ嘆いていたのをマーニャたちは聞いていた。
「えっ?新しい陛下の名前か?たしかバル・・・・・・なんとかだったな」
「キングレオの新しい国王陛下の名前がバルなんとか!?どういうことかしら・・・・・・」
 ミネアが言うと男は煙草を吸込み、息を吐いた。男はマーニャたちが何者なのか知っていたらしい。
「あんたら、仇討ちの旅なんだろ。今、ハバリアの牢屋には、大罪人がてんこ盛りなんだ。ちょっとハメを外した酔っ払いでも、おかみさんの世間話でも、人心を惑わせ、世相を騒乱させたとかなんとか言われちゃ、引括られて、押込められちまうんだから。あんたらも、もしも仇を見つけたとしても、ここじゃあ、滅多なことはしないほうがいいぜ」
 それで、酒場のジルはあんなに、騒ぎを恐れていたのだ。
「わかった。気を付けるわ」
 マーニャが礼を言うと、ミネアが男に小銭を握らせた。よっぽど多かったらしい。立去ろうとすると、慌てておまけを喋ってくれた。
「こないだ、お城の補修に出かけてた男が、大臣閣下のお昼寝の脇で、うっかり火薬をドカンとやっちまったらしくて、慌てて逃げてきたんだがな、血相変えた兵士どもがやっとこくり出してきてきて、あえなく牢屋入りさ。いまに、縛り首だって。みんな同情してるけど、さし入れもできねぇ。反逆者の仲間だなんて言われちゃあ、2度とお天道様が拝めなくなっちまうからな」
「なぜ、そんなことを教える?」
 オーリンが尋ねると男は持っていられなくなるまで吸った煙草を、「いや、何と無く。ただ新しい陛下ってのを、誰一人、まだまともに見たものがいないんだ。その補修っていうのが、だいたい、秘密の部屋を拵えるためだってんだから、おだやかじゃねぇ。キングレオでは、なんか世間に隠しとかなきゃならんことが起ってるんだ。・・・・・・誰かが、なんか、やってくれたらいいなぁと、みんな、思ってるって、ちょっと言いたかっただけだよ」海に放った。
 ハバリアの牢屋とやらは、すぐに見つかった。
 だが、オーリンは、まともに、中の人間と話したいなんて言うのだ。鉄兜の牢番は、ぶっきら棒に、ならん、のひとこと。
 仕方ない。マーニャはオーリンを押し退けて前に出た。ブラの肩ひもを、肩のほうに落としながら。
 切なくぶりっ子でおねだりする格好、「お願いしまあす。長くはかかりませんから。実は、ちちのかたきを探しているんです」ついでに腕を使って、ちょっとばかり、胸の谷間まで強調してやる。
 牢番は「ちちの。そりゃ、気の毒だな」と目を白黒させた。
「ちらっと、ね。見るだけ」
「見るだけ。触るのは、なし?」
「なし。ああん。そんなの、だめ。絶対」
 牢番は「ちぇっ、ケチい・・・・・・あれ?よし。コホン。ならば・・・・・・わかった。お前と・・・・・・そっちの女!御前等で行って来い」と慌てて姿勢を正した。
 牢屋からすぐに叫び声があがった。中に続いた暗い廊下の右、並んだ牢屋の鉄格子に、たちまち、大勢が顔を押付、隙間から腕を伸ばして、口々に訴えてるのだ。無罪を。
 ミネアとオーリンのふたりが無言のまま、牢屋に進んだ。また入り口を塞ぎ腕組みして、「で。その、仇とやらの特徴は?如何なる次第で仇と狙うに至ったんだ?」牢番は言った。
 真面目そうなことを言いながら、牢番の目は、マーニャの胸に釘付け。じりじり進み出て、ひとを壁際に追詰める。しかも、舌なめずりまでしている。

あとがき
ハバリアでの出来事です。
わたしはお笑いを見るようになってから某コンビの名前を勘違いするようになったり。
後で気づきましたがこれでも話の配分を間違えていたらしい。
今回は訂正箇所多すぎだなぁ。
次回はハバリアでの続きのあとお告げ所やアッテムトの話の予定。
4章は重要なストーリーが多いだけに暗くなりがちな話が続きますね。
だからこそのマーニャとミネアの姉妹何だろうと思ってます。
※次回は1月1日更新予定です。
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