18 凱旋 [DQ1]

18 凱旋



 地震の後、アレフガルドに平和が駆け足でやってきた。
 風は和らぎ、水はぬるみ、木の芽が吹き出し、花のつぼみが開いた。
 やっと、5年ぶりに本当の平和がアレフガルドに訪れたのだ。
 人々に笑顔が戻り、街は活気づいてきた。
 そして、ラダトーム城には旅人たちによって各地の様子が相次いで報告された。
 北の荒れた灰色の海は、穏やかな青い海に変わったという。
 広野には、草が目を出したという。
 竜王の毒に汚染された川には綺麗な水が蘇り、花が咲いたという。
 そして、砂漠や草原や森に住んでいた魔物の群れがおとなしくなったという。
「ルーラ!」
 アルスがラダトーム城に凱旋したのは、竜王を倒してからすぐのことだった。竜王を倒しにラダトーム城を旅立ってから、すでに1ヶ月が経っていた。
 美しく晴れ渡った、青く澄み渡った空は、どこまでも高かった・・・・・・。
 ラダトーム城の巨大な尖塔の見張り番の兵士が、西のなだらかな丘陵に、アルスの姿を見つけた。
 兵士の知らせを聞いて、ラダトーム城の多くの人たちがラダトーム城の城門に駆けつけ、ラルス16世や、大勢の兵士たちと共に、若き勇者を喜びの声で迎えたのだ。
 予言者の老人や、旅の商人や、城のメイドの女や、その息子の少年・・・・・・城の人たちの懐かしい顔がたくさんあった。
「おお!アルス!勇者よ!すべては古い言い伝えのままであった!」
 謁見の間に上がる階段の前でラルス王は目を潤ませながら、万感を込めてアルスを見つめた。
「約束どおり竜王を倒してきました。コレが、光の玉です」
 アルスはラルス王に光の玉を丁重に差し出した。
「確かにこれは光の玉だ!」
 ラルス王はじっと美しい光の玉を見つめると、光の玉を近くにいた兵士の1人に渡し、「すなわちそなたこそは勇者ロトの血を引く者!よくやったぞ、アルス!」アルスの手を両手で強く握りしめた。その目から大きな涙がこぼれていた。
「ところで、勇者よ」
 ラルス王はアルスを見て言った。
「そなたこそ、平和になったこのアレフガルドの世界を治めるにふさわしいお方なのじゃ!どうじゃ?わしにかわってこの国を治めてくれるな?」
「えっ!?」
「どうじゃ?」
 アルスは思った。ひょっとしたら、勇者となったなら、本当に国の1つを治めるのにふさわしいのかもしれない。それならラダトームの国王になるのも悪くない。だが。
 それでは竜王の誘いを受け入れたのと同じではないか。もしここで国王になってしまえば、かつての竜王と同じようにアレフガルドを支配することになる。形は違うが、竜王と同じ行動はとりたくなかった。だから、彼は言った。
「いいえ、申し訳ありません。お言葉はありがたいんですが、私は、また旅に出るつもりです」
「何!?旅に!?」
「はい。もし私の治める国があるなら、それは私自身の手で探したいんです」
「そうか・・・・・・。そういうことならもう止めまい。アルスよ。気をつけて旅立つのじゃぞ」
 そのときだった。
「待ってくださいませ!」

あとがき
初めてEDになったとき、勇者がしゃべったのにはホントにびっくりしました。
てっきりDQの主人公はしゃべらないのが当たり前だと思っていたので、予想外の出来事でした。
なぜ勇者はラダトームの王になることを拒否したのか。
もし王様になっていたとしたら問題があったのか。
などと考えながら、私なりに書いてみました。
話は続きでごめんなさい。
これまた区切るのが難しいですが、今回はここで切らせていただきます。
次回はエピローグ的なもの。
1本編の最終回です。

※次回は5日更新です。
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ともちん

エンディングで勇者が喋ったこと・・・すっかり忘れています(^-^;)

次回はいよいよ最終回ですね。すでにしみじみとしてしまっています。
終って欲しくない気持ちもありますが、楽しみにしています。
by ともちん (2012-09-05 00:46) 

あばれスピア

ともちんさん
最後に王様と話していたら
しかし あなたは いいました。
↑こう出た瞬間ビビリました(苦笑)。
では最後お付き合いください。
by あばれスピア (2012-09-05 23:27) 

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