6 ハーゴン(4) [DQ2下]

6 ハーゴン(4)

 神殿の7階にあたる巨大なドーム・・・・・・。
 ここがこの神殿の中心部のようだ。中央の部屋はバリアで厳重に守られている。
「トラマナ!」
 カインの呪文を使って、アルスたちは中央の部屋に進んだ。
 このドームには窓が一つもない。真昼でも真っ暗だ。
 その暗闇の中で、2つのかかり火がたかれていた。
 その炎の灯りに、ドームを支えている壁が照らし出されている。
 ドームの正面の祭壇の奥に、ぴたりと絞められた扉があった。城門ほどもあるアーチ型の大きな扉だ。扉には巨大な蝙蝠のレリーフが施してあり、飾られた2本の円柱にも神殿の中でいくつか見かけているおどろおどろした魔物のレリーフが飾ってあった。
 その扉の前で、白いローブをまとった一人の男の人型の純魔族が、玉座に座って無心に祈りをささげていた。
 カインより少し大きい男で、手には杖を持っていた。
 男は、時々祈りの調子をとるように、杖で鳴らした。
 その音が、闇の中にこだました。
 こいつがハーゴンなの・・・・・・?
 勇者の子孫たちはドームを進み、アルスとナナは壁の陰に隠れて、息を殺してその後ろ姿を見てナナは思った。
 その隣の壁の陰で、カインもまた、その男を見ていた。
 扉の上の、アーチの中央にある台座に、ロンダルキアへの洞窟の入り口で見た邪神のレリーフが施されていた。
 邪神のレリーフは、かかり火の灯りに照らされて、まるで生きているように見えた。不気味な3つ目は赤い光を放ち、頭の上についた異形の魔族は、時々炎を吐き出しているように見える。
「そこまでだ、ハーゴン!」
 アルスの大声が天井のドームにこだました!彼ら勇者の子孫たちが、円柱の陰から飛び出した!
 ハーゴンは、ゆっくりと振り返った。一見仮面をかぶっているように見える。だが、それは仮面ではなかった。青磁器のような青いつるりとした肌。つりあがった鋭い黄色の眼。三角の大きな口。全身からは、背筋の凍るような殺気を放っていた。
「誰じゃ?私の祈りを邪魔する者は?ん?そこにいるのは・・・・・・勇者アルスの血を引く者どもか・・・・・・愚か者め!私を大神官ハーゴンと知っての行いか!?」
 ハーゴンは、じっと睨み付けながら、低い静かな声で言った。
 勇者の子孫たちが答えずにいると、ハーゴンは言った。
「ならば許せん!己の愚かさを思い知るがよい!この大神官ハーゴンの祈りを妨げた以上、生かしてはおけん・・・・・・では憶えておくがよい。私が偉大なる神の使いハーゴン様じゃ!」
 勇者の子孫たちは3方に散ると、カインとナナが素早くハーゴンよりの飾られた円柱の陰に移動して、攻撃を始めた。同時にアルスも斬りかかった。
 カインの隼の剣の素早い攻撃がハーゴンを襲い、続いてナナのいかずちの杖での殴り攻撃が襲った。
 だが、ハーゴンが杖を振り回し、カインとナナの攻撃は、阻まれてしまった。さらに、杖を突き出して呪文を唱えた。
「ラリホー!」
 アルスは、思わず立ち止まって身をかわした。だが、紫の泡の魔力は連続して襲ってきた。
 アルスはかわすのが精一杯で、それ以上斬り込むことができなかった。その時だった。隙をついて天井の闇の中から、カインが隼の剣を振りかざしてハーゴンに斬りかかった。
 だが、ハーゴンが一瞬姿を消しての攻撃をかわすと、5メートル後方に現れて呪文を次々に浴びせた。
「ラリホー!」
 カインは、床を前転しながら紫の泡の魔力をかわして、立ちあがった。
「・・・・・・」
 カインは、ハーゴンをじっと見た。
「この私を倒そうというのか!?愚か者めが・・・・・・!」
「今ボクらがやることは・・・・・・」
 カインは、ハーゴンに隼の剣の刃先を向けた!
「勇者アルスの名の許に戦うことだっ!」
「何っ!?」
 ハーゴンは、恐ろしい眼でカインを睨み付けると、「戯言もほどほどにするがいいっ!」杖を頭上に振りかざして呪文を唱えた。
「ラリホー!」
 紫の泡の魔力が大量にドームの中に部屋の中に起こり、とたんに彼らを巻き込んだ。
『うわあっ!』
 彼らの声がハモり、次々に飾られた円柱の陰に隠れた。
 全員魔除けの鈴を装備しているとはいえ、こんなところでうっかり眠らされては、ひとたまりもない。
 さらに、ハーゴンが呪文を唱えると、「イオナズン!」部屋の天井に光の球が生成され、光球が闇を照らした。
『うわあっ』
 次の瞬間、光球は彼らの付近に直撃していた。全身を爆発の衝撃が遅い、彼らは声をハモらせエビのようにはねた。全身に衝撃を受けて、身動きすらできなかった。
「ふっふっふ。見よあれをっ!」
 ハーゴンは杖で扉を指した。
「暗黒の狭間とつながる暗黒の扉じゃ!」
「何っ!?」
 彼らはやっと顔を上げて、杖の指す先を見た。
 いつの間にか、観音開きの扉の中央が僅かに開いていて、その奥に不気味な闇が口を開けていた。大人一人が入れるほどの幅だ。
「生贄を捧げれば、暗黒の扉は全開するんじゃ!もう一人なっ!」
 そういってハーゴンはニヤリと笑った。
「さすれば、邪神がやってくるんじゃ!」
「そんなことさせるかっ!」
 アルスは、必死に身を起こして叫んだ。
「これ以上勝手なことをさせてたまるかっ!」
「ふっふっふ。悪は真じゃ。悪のみがこの世を救い、悪のみがこの世に栄える。それが邪神の教えじゃ・・・・・・」
 ハーゴンは、飾られた円柱の横で気を失っているナナを見た。
 次の瞬間、ハーゴンがナナの目の前に移動していた!それに気が付いたナナは、ハッと息を呑んでおびえた。
「さあ、迎の使いの者となるのじゃっ!」
 ハーゴンは、乱暴にナナの左手をつかんだ!
「手前っ!」
 アルスは、全身の痛みに耐えながら、必死に斬りかかった。
 だが、それより早くハーゴンの呪文が炸裂し、「イオナズン!」アルスは光球の爆発に巻き込まれて、後方の壁まで吹っ飛んで気を失った。鉄の棒で殴られたような衝撃があった。
 カインが、必死に、力の盾をかざした。
 力の盾には、自分にベホイミの効果があるのだ。
 回復したカインは隼の剣でハーゴンに素早く攻撃した。隼の剣の切っ先が、ナナを連れ去ろうとするハーゴンの背中を襲った!その攻撃に、ハーゴンはついに肩を震わせた。だが、カインを見て、恐ろしい形相でニヤリと笑うと、杖を突き出した。
「イオナズン!」
「うわあっ!」
 カインは、悲鳴を上げ、爆風によって円柱に激しく叩きつけられて悶えた。
 ハーゴンは、強引にナナを連れて、扉に向かった。
 ナナは、ハーゴンを見ながら必死に抵抗し、いかずちの杖を手にした右手をかざした。
 ナナは、思ったのだ。今できることはこれしかない・・・・・・。
 いかずちの杖が鋭いいかずちを放ち、ハーゴンの胸に突き刺さった。
 ハーゴンは、恐ろしい形相で睨み付けると、「いかにいかずちの杖とはいえ、この私に通ずるとでも思っておるんかっ!?この私の体を流れる恐るべき力になっ!私は魔族の力を得たんだぞっ!」全身に力を込め、いかずちを弾き返そうとした。
「ムーンブルクの人たちの仇!」
 ナナは必死にいかずちの杖をかざした。
 ・・・・・・ハーゴンの恐るべき力の源、それは、この世界のものではない・・・・・・。
 およそ2か月、多くの魔族とのコンタクトに成功したハーゴンは、はるか時空を越えた永遠の命のもとを授かったのだ。
 ・・・・・・それは、人間の目には深紅の光に見えるまがまがしい輝きとなって、ハーゴンの体に吹き込まれたのだ・・・・・・。
「ううっ!」
 ハーゴンの顔が徐々に歪み、体がぶるぶる震え出した。その額に汗が滲んでいた。
「覚悟!」
 ナナは、いかずちの杖をかざし続けた。
「うわああああっ!」
 突然、ハーゴンはいかずちに悲鳴を上げてのけぞった!
 その悲鳴を聞いて、やっとアルスの意識が戻った。
 ナナは、ハーゴンから解放された。
 ハーゴンは体を焦げ付かせ全身を激しく痙攣させた。
 ハーゴンは、精気の抜けたようなさらに青い顔でナナを見た。
「その杖さえなければ・・・・・・」
 ハーゴンは、呪文を唱えようとした。同時に、ナナが、いかずちの杖を構えた時だった。
「でやあああああっ!」
 やっと立ち上がったアルスが、ハーゴンめがけて猛然と稲妻の剣をかざし始めた。
「うっ!?」
 ハーゴンは、慌てて呪文を唱えようとした。だが、それは無駄なあがきだった。アルスのほうが早い!
 ハーゴンは、愕然とした。
 そして稲妻の剣から、すさまじい光の稲妻が迸った。
「ぐおおおおおっ!」
 ハーゴンの悲鳴が、ドームの闇に響き渡った!
 一瞬にして、ハーゴンの体がさらに黒焦げになっていた。
 額、頬、首、肩、腕、胸・・・・・・いたるところから一斉に真っ赤な光が噴出した。
 この深紅の魔光こそが、もたらされたハーゴンの力の、絶大な魔力の源だったのだ!
「ううっ!」
 ハーゴンは、それは恐ろしい眼でアルスを睨み付けた。
 すると、青いつるりとした肌が醜く歪み始めた。見る見るうちにしわだらけになり、頬はげっそりとこけ、骨と皮だけになった。同時にハーゴンの体も空気が向けるようにどんどん縮み、あっという間にハーゴンは、ナナよりも小さい、痩せこけた貧相な人間の老人に姿を変えた。歳相応のハーゴンに戻った。
「おのれ口惜しや・・・・・・。このハーゴン様がお前らごときにやられるとは。しかし、私を倒してももはや世界を救えまい!悪は永遠じゃ・・・・・・。私の肉体が消えても、お前たち・・・・・・絶対に・・・・・・このロンダルキアから・・・・・・出さん・・・・・・。悪の世界からな・・・・・・」
 苦しそうに喘ぎながらハーゴンは、扉の中央に口を開けている闇の中に飛び込んだ。自らが生贄となって、暗黒の扉を開くために・・・・・・!
「わが邪神シドーよ!今ここに生贄を捧ぐ!ぐふっ!」
 ハーゴンは、闇の中の気流の渦に巻き込まれ、断末魔とともに吸われるように消えていった。
「倒した・・・・・・やっと、ハーゴンを・・・・・・!」
 アルスが、そう思っていった。そして勇者の子孫たちが部屋を出ようとした時だった。
 邪神のレリーフの3つ目がさらに光を増すと、鈍い音を立てて、扉が完全に開いたのだ!暗黒の扉が・・・・・・。
 扉の中で、激しく気流が渦を巻いていた。
 と。扉の奥から、激しい炎が無数に飛び出して勇者の子孫たちの行く手を遮った!

あとがき
ハーゴンの神殿です。
今回はどれも盛りだくさんの内容になりました。
それでも力及ばずな箇所もあり、これからも精進していきたいです。
最初はハーゴンの神殿に入ったら・・・というもの。
この幻の原因は以前ローレシアでつかまってた悪魔神官が・・・ということになってます。
続いてアトラスとバズズ戦。
アトラスは、まあ順当ですが、バズズ戦はちょっと悩みました。
なんか私が2のゲームで戦ったとき、呪文ばっかり使ってきて、直接攻撃してきた記憶がほとんどなかったんですよ。
そこで、ここでのバズズの攻撃も呪文だらけにしました。
あとリメイクがモデルの性か、私がプレイした時もメガンテ運が良くて使ってこなかったんですが、オリジナル版(FC版)からプレイしている方だとやっぱりバズズといえばメガンテというイメージもあるかと思ったんで、それっぽい描写を入れてみました。
あれが本当にメガンテなのかは、想像に任せます。
ベリアル戦はやっぱり理不尽なべホマですかね。
私がゲームやったときもやってきましたよ、確か1回だけでしたが。
そしてハーゴン戦。
今回の中で1番書くのが悩んだかもしれません。
誰に何をやらせるかで時間費やしたかも。
ラスボスさん、正式に名前が登場したのはゲームと同様ハーゴン様の最期からです。
それにしてもDQ2はこのハーゴンの神殿に入ってから、リメイク版でもバランス悪い気が(私がへたくそなだけか?)。
ハーゴンそしてラスボスと、サマルとムーンのやることが限られてるっていうのがなあ・・・。
その点DQ3以降は、効率いいか悪いかは別としていろんな選択肢があっていいと思います。

ラスボス戦に関しては次回で(続きでごめんなさい)!
※次回は10月1日更新予定です。
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ともちん

まとめ読みになってしまいました。
とても読み応えがあって、今回もドキドキしながら
読ませてもらいました。とても面白かったです。
バズズのメガンテ…今も背筋が…な思い出です(笑)
by ともちん (2013-09-06 08:24) 

あばれスピア

ともちんさん
こんばんは。
今回は1回毎のボリュームが1番多かったと思います。
バズズのメガンテ、やっぱり記憶にある方が多いんですね。
by あばれスピア (2013-09-06 23:17) 

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