6 シャンパー二の塔(1) [DQ3-1]

6 シャンパー二の塔(1)



 アルスたちは塔の700~800メートル手前の茂みまで近づくと、日が暮れるのを待たずにシャンパー二の塔に接近した。ナジミの塔同様、何100万個もの石を積んで造られた塔で、無残に荒れ果てていた。
「悪名高いシャンパーニの塔には、昔から色んな盗賊どもが住み着いてるらしい」
 アルスがここに来るまでの間に聞いた人の話を思い出して話すと、「その話をしてくれた荒くれたちも、カンダタとは別のある意味盗賊の仲間だったりするのかしら」ローザは、そういって無理やり笑ってみせた。言葉とは裏腹に、その顔はさすがに緊張と不安に満ちていた。逆にアルスは、気持ちが高ぶってくるのが自分でもはっきりとわかった。生まれてはじめての本格的な悪人いじめ・・・・・・いや悪人退治だ。
 5階へのぼる階段の下までたどり着くと、上からほのかに明かりがもれていた。アルスたちは息を殺し、慎重に5階にのぼると、壁に松明が焚かれていた。消えてしまうのが時間の問題のような頼りない炎が、かろうじて小さい空間を照らし出していた。その空間は、いくつかの巨大な円柱が、壁とともに高い天井を支えている。辺りを見渡すと、そこは小さな部屋であることがわかった。アルスたちは気配を配りながら、部屋の中央にあたる南へ進んだ。すると、人影が2人見えてきた。
「おいっ!へんな奴等がきたぞっ!」
 アルスたち側の近くにいた1人が声を発すると、奥で机に向かって椅子に座っていたもう1人の男のところへいき、アルスたちの様子を探っていた。2人とも黒髪のモヒカン頭の人相の悪い荒くれの大男で、緑色の服を着ている。カンダタの子分たちに違いない。
 ローザを最後尾に、アルスたちは慎重に部屋のまんなかへと進んでいった。はっきりと見えるのは子分2人と2台の机と4脚の椅子と敷かれた赤い絨毯だけで、その奥は深い闇に沈んでいる。
 アルスたちが油断なく近づいてくるのがわかると、子分BがAにいった。
「よしっ!お頭に知らせに行こう!」
 どう見ても仲間になるために来たようには見えなかった。子分AとBは、部屋の奥にある上へあがる階段を上っていった。
「待ちやがれ!」
 アルスたちも、カンダタ子分たちを追いかけてその階段を上った。
 その先は塔の最上階になっていた。どうやらここが宝物殿ともいえる場所らしい。そこにさっきの2人の子分を含む似たような姿の3人の子分たちと一緒に、ボスと思われる人物が待ち構えていた。
 夕暮れ時のなか、最上階のちょうど正面に緑のパンツと紫の裏地に緑のマントとつながったマスクをかぶった巨漢が立っていた。身長はミゼラと同じぐらいだが、幅は普通の人間の4~5倍ぐらいあった。その眼は丸くて大きい。マスクのせいで詳しい顔や年齢までは不明だが、威風堂々としたその大男の全身から、ゆるぎない自信が溢れているのが感じられた。アルスたちが近づくと、大男は1歩進み出て言った。
「よくここまで来られたな。ほめてやるぜ!」
「カンダタだな!?」
 アルスが叫んだ。
「おまえを捕まえに来たぞ!」
「命が欲しかったら、金の冠をかえしなさいっ!」
「それとルビーのペンダントもよ!」
 ミゼラも、ローザも叫んだ。
「欲深いやつらだ。だが、オレ様を捕まえることは誰にもできん。さらばだ!」
 カンダタは豪快に笑い乍らそういうと、思い切り右足で床を踏みつけた。すると、なんとアルスたちの立っていた足元がいきなりなくなった!どうやらカンダタの足元に隠れた仕掛けのスイッチがあり、落とし穴が開くようになっていたらしい。
『わああっ!』
 アルスたちは声をハモらせ、さっきまで子分ABがいた部屋に落とされてしまった。
「あの野郎、逃がすかっ!」
 エルトがいい、慌てて最上階へもう1度のぼると、当然カンダタたちの姿はどこにもなかった。宝物殿に陳列されていた宝はすべてなくなっていた。アルスたちが探しているお宝もここにあったに違いない。
「逃げられたか!?」
 悔しそうにアルスがいった。
「待ってアルス、あいつらはたぶんそこから飛び降りて逃げたんだわ」
 ローザが部屋の北側を指差した。万が一逃げるための緊急用に用意していたのか、下の階までたらされた縄が1本、激しく揺れている。さすがいろんな盗賊が住み着くシャンパーニの塔だ。塔には盗賊が侵入者を防ぐための仕掛けや、脱出用の手段が整備されているようだ。もっともそれは、かつてロマリアが魔王出現に備えて建築した時から用意されていたものだが。塔から見張りが撤退した後、いつの間にかさまざまな盗賊団のアジトに適した場所になってしまったようだ。
「ここから飛び降りて追いかけましょう」
 ローザがいい、アルスたちは顔を見合わせうなずいた。アルスたちは最上階から飛び降りた!
 そこは子分ABがいた階へ続く部屋につながる、4階の広間だった。塔の中でも戦闘に適した開けた場所で、ここなら多少範囲のある呪文を使っても問題ないだろう。カンダタたちはいくつかのお宝を持って、まさに塔から逃げ出そうとしていた!ここにいるカンダタ子分の数はさっきの3人。いずれも、すでに同じ黄金色の甲冑に身を包んでいる。
 アルスたちが近づくと、カンダタが気が付いていった。
「しつこい奴等め!黙っておとなしく帰るがいい。できればオレは人を殺めたくねえ。オレの流儀に合わねえからなっ」
(続く)

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ともちん

カンダタ登場ですね。嬉しいです。
カンダタが出てくるとドラクエだなと
実感する面があります。
悪人いじめ…退治のくだりが面白いです。
by ともちん (2014-09-08 15:11) 

あばれスピア

ともちんさん
こんばんは。
DQの盗賊といったらやっぱりカンダタですよね。
存在感ありますし。
ついに登場です。
ちょっと3らしくなったか?
by あばれスピア (2014-09-09 00:09) 

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