7 アッサラーム(1) [DQ3-1]

7 アッサラーム(1)


「ルーラ!」
 翌日国王に見送られたアルスたちはローザと別れアルスのルーラでカザーブへ行くと北のノアニールをめざして旅立ち村に着いた。カザーブやロマリアの噂通り村の人々が眠り無事な村長の話で彼らは翌日エルフの隠れ里へ向かった。途中何者かがアルスに襲いかかってきた。
 相手の方が強かったが相手はアルスの目を見て動きを止め相手の眼に戸惑いの色が走った。
 黒髪に黒い瞳のかっこいい男で黒の首まである長袖長ズボンの上から黄色いベストと白い膝までのパンツを履き肩から水色のバッグをさげチェーンクロスをかけた30歳前後でオレンジのグローブと靴下茶色のショートブーツを履いた人物だ。
 襲った相手はシークスと名乗る一匹狼の盗賊で偶然見かけた強そうなアルスの持ち物を盗もうとした。カンダタの盗賊団の1人だがやり方が気に入らず抜けた。
 ノアニールの人々を助けようと隠れ里を探していると知りシークスは協力を申し出盗賊の能力で彼らは隠れ里を見つけた。シークスはミゼラに気があるが彼女は突っぱねた。
 若者の駆け落ちの相手は隠れ里の主のエルフの女王の娘でアンという姫らしく若者の年老いた父親が代わりに謝っていたが話を聞いてくれない。アルスたちでもらちがあかない中翌朝彼らは隠れ里の近くのノアニールの西に位置する洞窟を発見し入った。
 洞窟には体力や気力を回復する聖なる泉がある。地下4階の最深部には女が首に下げるには程よい大きさの赤い6角形の美しいルビーが1つ落ちていた。それが夢見るルビーで近くには書置きが残されていた。彼らは書置きを読んだ。

 お母様。先立つ不幸を
 お許しください。私たちは
 エルフと人間。この世で許されぬ愛なら
 せめて天国で一緒になります・・・・・・ アン

 聖なる泉の力は心中したアンの力で哀しい結末に全員涙した。彼らは隠れ里に行き夢見るルビーを返して駆け落ちしたアンと若者の誤解を解くと女王から眠りを解く目覚めの粉を授かった。
「ルーラ!」
 アルスのルーラでノアニールへ戻り村人たちを眠りから解きロマリアへ戻ったのがノアニールをめざして旅立ってから4日目の昼過ぎのことだ。
「ルーラ!」
 ロマリアへはアルスのルーラで戻った。ロマリアの目前で、突然シークスが別れを切り出した。盗賊団で色んなことをやらかして顔も知られて、大きな街はヤバいらしい。これからは気ままにやっていくという。
 アルスは右手を差し出した。
「またいつか、な」
「またいつか」
 シークスはそれを握り返す。
「元気でな」
 エルトが軽く手を上げる。
「ああ。お前さんも」
 シークスは手を放し、背中を向けた。
 ノアニールでオルテガはロマリアから東のアッサラームに向かったと聞いたので、翌日ロマリアから出発して夕方に着いた。
 アッサラームはアッサラーム王朝の街として栄えた。王朝が滅亡するとロマリア・カザーブ地方と中央大陸の交通の中継地点として東西の文化の交流地点として発展した。大商都で独特な文化の都市だ。
 街には聖堂や教会のほかに先のとんがった丸屋根の寺院が目についた。中央大陸は文化だけでなく宗教も運んだ。アッサラームは文化や人種や宗教をのみ込んでしまう胃袋のような街だ。通りには珍しい建築様式の建物が並んで目を楽しませた。
 アルスとミゼラは何と無く肩透かしを食らったような気分だ。ロマリアの城下町以上の雑踏を想像したが夕暮れ時の通りには普通の街の昼間と同様人が多かったものの街は活気がない。だが「夜がこの街の本当の顔です。眠らない街でしてね朝まで眠らせてくれません。まあゆっくりとアッサラームの夜を楽しんでください」夕方の街の様子をはなすと宿屋の主人はアルスたちを送り出した。
 日が落ちると街の様相が一変した。劇場からダンスの曲が風に乗って流れ様々な人種が行き交い聞き慣れない言葉が賑やかに飛び交う。アルスたちの心は弾んだ。ローザも一緒なら楽しいのに・・・・・・アルスはローザを思い出した。
 アルスたちに気づかれないよう宿からあとをつける怪しい猫がいた。黄色と茶色の毛のトラ柄の痩せた猫で普通のなりだが彼らを追う目は鋭い。
 街の中央で若い踊り子の娘が甘い言葉で客寄せをしていた。黒い眸が怪しげだ。
「あ~らすてきなお兄さんたち!ねえぱふぱふしない。気持ちよくしてあげる。いいでしょ?ねえってば」
 娘はアルスとエルトに抱きついてきた。アルスはいいわけをしながらなんとか振りほどいたがエルトは満更でもなさそうに手を振った。
「あらうれしい!でもいっぺんにお相手できないわよ。あとで一人で来て。いい?そこの家だから」
 娘は西にある家を指差した。
 夜の街では人々からさまざまな話を聞けた。オルテガの話も聞けた。
「何年くらい前だったかあの勇者オルテガがお宝を求めて南に向かったらしい」
 以前シークスが考えた通りイシスへ向かった可能性が高そうだ。
 アルスたちをつけていた怪しい猫はすぐそばの物陰に隠れて腰をおろして話を聞いていた。勿論アルスたちは気にもとめなかった。
 ミゼラは何気なく、トレドとグレンのことを思い出した。2人は、この街の雰囲気にぴったりで、顔も広そうだが、元気にしているだろうか。そんな事をアルスたちに話すと、話を聞いた街の住人は事も無げにいった。
「ひょっとして、トレドとグレンのことか?」
 ミゼラは顔を輝かせた。
「最近見掛けなかった?」
「いや、見てないな」
 そういって主人は2人について話してくれた。
「何があったかしらないが、グレンはこの街の大富豪の一人息子でな」
『大富豪!?』
 アルスたちは声をハモらせた!そんな生い立ちだとは想像できない。
「噂だと子供のころ散々親に尻拭いさせて、勘当されたって話だ。行っても親は会おうとしないぜ。トレドの母親はビビアンって芸名で劇場でおどっているがな」
 劇場は街の南西にあるが、劇場とは名ばかりで、ベリーダンスのショーを見乍ら酒を飲む店だ。
「いらっしゃいませ。ここは劇場です。ごゆっくりお楽しみください」
 受け付けの案内嬢に案内されビビアンについて尋ねると、「ビビアンちゃんならあの人ですよ」と、舞台の踊り子を指差した。ほかの踊り子たちと一緒に腰を振り乍ら踊る、見た目はまだ若々しい踊り子だ。舞台の踊り子たちの中で1番輝いている。エルトがベリーダンスを踊り乍ら舞台のビビアンに近づいた。
「私はビビアン、この劇団のスターよ!駄目よお客さん。舞台にあがっちゃ」
 トレドの母は驚かずたしなめた。ほかの踊り子たちも言う。
「あらお客さんも一緒に踊りたいの?はいもっと腰を振って!」
「私たちの肌や衣装には触らないでね」
 エルトは、「ちょっくらあとで話があるぞ」と踊りながら告げ、若い踊り子たちのお尻を触って戻った。
 舞台が終わると、トレドの母はアルスたちの席にきて、何も聞かないうちにいった。
「トレドが迷惑でもかけたの?」
 もう、あたしには関係ないわよ・・・・・・とでも言いたげな口調だ。
「いくら探してもこの街にはいないわよ」
「わたしたちは・・・・・・」
 ミゼラは躊躇ったが、アルスとエルトが言葉をつづけた。
「友達なんですよ」
「そうだ、友達だ」
 彼らは、それぞれ名乗り、アッサラームに来た目的を告げた。
「アッサラームに行ったら、ぜひおふくろに会ってくれっていわれてたんだ。なあミゼラ」
「・・・・・・そう。元気だからよろしくいってくれって」
 ミゼラも口裏を合わせた。トレドの母は、彼らを見ていた。顔から警戒心が消えていた。
「いい人たちねえ、あなたたち。人様にだけは迷惑かけるなって、そういって女手一つで育てたんだけど、調子ばっかりよくてねえ」
 トレドの母は涙ぐんだ。
「今頃どこで何をしているやら」
「心配ないぞ、あいつなら。俺たちよりよっぽどしっかりしてるぞ」
「・・・・・・ああ、忘れてた。頼まれてたの、これ渡してくれって」
 ミゼラは金貨5枚を出すと、「遠慮しないでとってよ。トレドのお金だから」躊躇っているトレドの母に握らせた。
「ほんとにいい人たちねえ、あなたたちは」
 金貨を握りしめた手に涙が落ちた。
(続く)

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ともちん

パフパフ来ましたね。

今回ラストのシーンで思わず
胸が熱くなりました。

次はパフパフの続きを
楽しませて頂きます♪
by ともちん (2014-10-24 02:10) 

あばれスピア

ともちんさん
こんばんは。
いろんなぱふぱふありますが、1番覚えてるのが3なんです。
ほかの内容は今回詰め込み過ぎだったのが反省です。
書き直しする時はちょっと気を付けたいです。
by あばれスピア (2014-10-24 22:21) 

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