9 バラモス城(2) [DQ3-2]

9 バラモス城(2)

 暫く休んで、体力を回復させた一行は、向かって左の巨大な階段をのぼると、屋上へと上がっていった。
 道なりに進んでいって、先頭のアルスが、足を止めた。気配が・・・・・・かすかだが魔物らしい気配が感じられた。
「見えるか?」
 アルスは、最後尾にいるローザに尋ねた。4人の中で、彼女が1番夜目が利くからだ。
 ローザは首を横に振ると、確かめようと前に出た。と、突然前方の闇から、一条の閃光が迸った。
「ギラ!」
 相手らしき小さな声が上がり、慌てずに炎をかわしたローザが、理力の杖を振り被ると、理力の杖の先端が、周囲の壁を打ち付けながら、前方の床に炸裂した。
 だが、たった今炎の呪文で攻撃をしてきた魔物の姿は、どこにも見えなかった。
「何今の?」
 ローザが、不安そうに振り返った。すると、さっきの小さな声が、聞こえた。
「ギラ!」
「うわっちちッ!」
 エルトが悲鳴をあげ、「誰か俺のお尻に火をつけようとしたよ!」などとブツブツいいながら、焼け焦げたズボンのお尻に呪文を唱えた。
「ベホイミ!」
 この後も謎の敵は、前後、左右御構い無しに攻撃を仕掛けてきた。たいがいの場合、攻撃は一瞬で終わる。アルスやミゼラが稲妻の剣やドラゴンキラーで斬りかかった時も、ローザやエルトが理力の杖やゾンビキラーで攻撃を加えたときも、相手の姿は闇の中に消えていた。
「全くッ!いったい何者なの!?」
 5度目の攻撃のあと、ミゼラが忌々しげにいった。
「たいした攻撃力は持ってないらしいけど、ともかく油断だけはしない方がいいな」
 アルスがそういって、ふたたび歩きだしたとき、「また来るわ。今度は後ろよ」ローザが理力の杖を構えて、振り返った。耳を澄ませ、全身の神経を闇の中へ集中させる。
 ガサッ・・・・・・ズルズル。なんとも形容しがたい音が、聞こえてきた。
「もう少しだ。もうちょい近づいたら、俺が正体を暴いてやる」
 月の光を剣に反射させて正体さえわかれば、相手の強さから考えて、残り3人の攻撃でかならずしとめられるはずだ・・・・・・アルスはそう考え乍ら、相手が近づくのを待ち受けた。
 シュッ・・・・・・小さな空気音が聞こえた瞬間、アルスは気配めがけて光を当ててみた。
「ん・・・・・・?」
 月の光に照らし出されたのは、見覚えのある魔物だった。
 食事を運ぶ円盆ぐらいの直径で、中央部が半球形に盛り上がっている。色は黒鉄色で、不釣合に大きな目が2つ光っていた。
「あっ、はぐれメタルだわ!」
 ミゼラがそういうと、ローザが理力の杖で攻撃した。
 理力の杖による攻撃は魔物に何の影響も与えず、はぐれメタルはこそこそと壁の影に隠れた。
「この野郎!さっきはよくもやったな!」
 エルトが、ゾンビキラーで突きを繰り出した。その威力は、以前に比べてはるかに成長していた。
 ところが、そんなゾンビキラーでの攻撃も、魔物の表皮に掠り傷ひとつつけることができなかった。まるで液体のように魔物の表面は波打ち、ゾンビキラーの衝撃を打ち消してしまったのだ。
 続いてローザが、ふたたび理力の杖で攻撃してみた。さっきよりも、鋭く攻撃するのを意識してみたが。
「なんだ、こいつは?」
 アルスは1瞬、自分の目が信じられなかった。
 自身の魔力をまとわせて攻撃する理力の杖の攻撃にも、はぐれメタルはさして影響を受けていなかったのだ。
 呆気にとられているアルスたちの前で、魔物はまるで水が染み込むように、床の石材の隙間へ逃げ込んで姿を消してしまった。
「どうなってるんだ?」
 エルトが魔法の鎧の上から、焦げたズボンのお尻をかきながら呟く。
「また来るかしら?」
 ローザが不安そうにいったとき、クシュッ・・・・・・またもあの形容しがたい音が聞こえた。
「下だ!」
 アルスが叫ぶのと殆同時に、彼らの足元から黒鉄色の塊が飛び出して来た。はぐれメタルにしては好戦的な奴である。
「キャッ!」
 ローザが悲鳴をあげて飛びついてきたはぐれメタルを振り払い、『こいつめ!』アルスとミゼラは左右に身をかわすと、素早く稲妻の剣やドラゴンキラーでジャンプして斬りつけたりしてみたが、2つの剣はむなしく魔物の表皮に弾き返された。
「このモンスター、前から思ってたけど、硬いんだか柔らかいんだかよくわかんないわね」
 ミゼラがふたたび飛掛ってきたはぐれメタルに、突きを入れながらいった。
 ミゼラのドラゴンキラーの切っ先で弾かれた魔物は、鞠のように跳ね上がった。と、「ピーッ・・・・・・」笛のような泣き声をあげて落下した魔物に向かって、アルスが正面からジャンプして斬り付けると、バギーン・・・・・・まるで鋼鉄と鋼鉄を打合せたような甲高い音が響き、はぐれメタルの身体は真っ二つになって落下した。
「凄いじゃないアルス、あたしにも斬れなかったのに」
「いや運だ。俺の運がよかったか、此奴の運が悪かったかだ」
 ミゼラが関心しているうちに、水銀のような体液が床に吸い込まれ、はぐれメタルの身体は見るまにしぼんでいった。
(続く)

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