10 闇の世界(1) [DQ3-2]

10 闇の世界(1)


 アルスたちがギアガの大穴に飛込んでから3時間後の夕方・・・・・・。
 この大穴にやってくる人影が2つあった。トレドとグレンだった。
 トレドバークの牢屋でアルスたちにイエローオーブのことを教えて彼らと別れた。あれから10日が経っていた。トレドバークの殆の人々がトレドのやり方を否定していたが、数少ない理解者もいた。アルスたちがラーミアに乗って竜の女王の城に向かっていたころ、スー族の老人や理解者たちの弁護もあって2人は牢屋から出ることが出来た。そしてトレドバークの人々の中から1番相応しい新しい長を選ぶと、トレドとグレンはそのまま普通の住人となってくらしていた。
 ところが、1時間前のことだった。2人が見知らぬ人物に突然声をかけられて振り向くと、いつの間にか小柄な老人が現れていた。老人は、「アルスたちはバラモスを倒した」と告げると、2人はアルスたちからルイーダの酒場の前で会ったアリアハン東の祠の老人のことを聞いていたのをようやく思い出して、相手がその老人だとわかった。トレドとグレンはアルスたちのことを自分のことのように喜んだ。すると老人はいった。
「だが、この世界に君臨しておったのはバラモスではなく、ゾーマという大魔王だったんじゃよ。バラモスもまたゾーマに操られておったひとりにすぎなかったんじゃ。そのことを知ったアルスたちは、ゾーマを倒すために、ギアガの大穴を抜け、精霊神ルビス様が別の空間に創造したという異世界へわたった。もし、おまえさんたちがあとを追っていきたいなら、これを使うがいい。普通はキメラの翼を使ってもギアガの大穴にはいけないが、これならすぐにギアガの大穴のある島へとわたることが出きる・・・・・・」
 そして賢者は、普通のものとは少し色が違う特別なキメラの翼をわたして消えたのだ。
 牢屋から出てから、トレドとグレンはずっとアルスたちのことが気になっていた。そして、アルスたちを追ってふたたび旅に出てどこか新しい場所でやり直そうと思っていた矢先だったので、迷うことなく特別なキメラの翼でこの島へわたってきたのだ。
 トレドとグレンは大穴に辿り着くと、足元の不気味な気流が渦を巻いている漆黒の闇を見おろした。そのとき、「どうやら仲間のようだな・・・・・・」背後から人の声が聞こえて2人は慌てて振り向いた。黒髪の長髪を辮髪にした大男が立っていた。その目は黒く、剃刀の刃のように鋭かった。身長はエルトと同じぐらいで、黄色のズボンとオレンジの線の入った黒のブーツをはき、胸に龍の文字が書かれたオレンジのふちどりの緑の武闘時に着る服を白い帯でまとめ青い石を付けている。服から食み出ている赤い腕輪をはめた筋肉はまるで鋼鉄のように固くしまっていた。
 相手はニヤリと笑うと自分の名を告げた。
「俺はグラップ。アルスたちとは知り合いだ」
 なんとグラップと改名したシークスだった!盗賊から足を洗ってダーマで武道家に転職したグラップは、ひとり放浪の旅を続けていた。今日ポルトガでバラモスに呪いをかけられたというカルロスとサブリナのカップルが助かったことを確認してバラモスが滅ぼされたことを知り、そのまま船を乗り継いで海賊の家に行って頭とカップルからもらった誘惑の剣を前にそのことについて話していた。だが、やはり1時間前のこと。海賊の家から出発しようとしていたグラップの前に突如老人が現れ、トレドとグレンに告げたのと同じことを告げ、特別なキメラの翼を置いて姿を消した。
 できることならオルテガに代わってアルスを見守りたいしミゼラにも会いたいと思っていた矢先のことだったので、グラップも迷うことなくキメラの翼でこの島にわたってきた。
「さあ、行くぜ!」
 グラップが漆黒の闇に飛び込むと、早速トレドとグレンもあとを追った・・・・・・。
(続く)

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