5 魔の島へ(2) [DQ3-3]

5 魔の島へ(2)

『トラマナ!』
 ローザとエルトの声がハモった。アルスたちは魔力のバリアに守られゾーマの城の囲まれた沼を沈まずに抜けると、正面におどろおどろしい石造りの城があった。アルスたちは魔物の気配を探りながら城に接近すると、素早くなかに侵入した。
 1階から様々な部屋に入り地下1階も進んだが、無限ループとなった階層などに惑わされた。迷いつつも1階の中央へ進む部屋を見つけた。アルスたちが部屋に入ったとき、後ろから1つの大きなものが素早く部屋に侵入していたが彼らは気づかなかった。部屋に入ると背後で突然扉が閉まってしまった。扉には鍵がかかっている!開けられなかった。部屋の天井は闇に覆われているので天井の高さはわからなかったが、両側にずらりと並んだ大きな石柱が広大な天井を支えているのだろう。大勢の人を収容できそうなホールだった。
 アルスたちは慎重にホールの奥へと進んでいった。奥には城の中心部へ続いていると思われるが、そこは鉄格子によって閉ざされていてやはり開きそうにない。4人の足音のほかには何の音も聞こえなかった。
 しかしエルトはホールの向う側から伝わってくる確かな殺気を感じていた。いやエルトばかりではない。アルスも間近に迫った敵の気配をとらえ、油断なく歩を進めていた。
 どこからともなく不気味な声が聞こえてきた・・・・・・。
「われ等は魔王の部屋を守るもの!われ等を倒さん限り先には進まんぞ!」
部屋の通路の両脇に飾られた石像の目が、体が光出した。石像が叫び声をあげると同時に魔物の群れは雄叫びをあげて襲い掛かってきた。
 魔彫刻属の動く石像の上位種族の大魔神を中心にした物質系の魔物の大部隊だ。その数全部で6匹、いや6体。
「ラリホー!みんな離れるな!」
 アルスは王者の剣を抜き放ち、先頭の大魔神に向って呪文を唱えた。
 ミゼラのバスタードソードがうなりをあげ、ローザも理力の杖で攻撃した。
「ラリホー!」
 エルトの呪文も敵の中央部で放たれた。
 だが、いくら攻撃しても大魔神たちは怯まなかった。次々と巨大な腕を降りまわしては休む間もなく巨大な足で踏みつけようとしてくる。
「このままじゃまずい!」
 三方から飛掛ってきた大魔神の攻撃を避けながらミゼラが叫んだ。
 と、そのときだ。4人を完全に包囲していた大魔神たちの後方で凄まじい叫び声が響いた。1匹の大魔神が吹っ飛び、派手に大魔神の体の石がかけらとなって飛び散る。
 部屋に素早く侵入していた1人の男が片っ端から大魔神を攻撃し始めた!
「ええいっ、どけどけっ!」
 忍びの服を着た巨漢が叫びながら相手の攻撃をひらりと身をかわし、「アチョーッ!」その長身の武道家が凄まじい速さでドラゴンクロウを振るった!
 顔が崩れ腕が砕かれ、すぐもう1匹の大魔神も無残な屍となって動かなくなった!
「あれは・・・・・・!?」
 アルスがいうとその男は大魔神の包囲網を破りアルスたちのところへと進んできた。
「よおミゼラ、元気そうだな相変わらず」
 ミゼラの目は点になった。
 振り向くと、ミゼラのすぐ後ろに一人の武道家が立っていた。
 とりあえず、害意はなさそうである。
 歳のころはエルトと、おそらくどっこいどっこいだろう。黒い髪。黒い瞳の、なかなかかっこいい顔立ちなのだが、歳と不相応に伸ばした辮髪にした髪が、それを半減させている。
 当人は、それに気づいていないようだが。
 はて?
「よぉ、久し振り」
 言ってエルトは片手を上げる。
「いつかはどうも」
 言って男も手を上げる。
 さらにアルスもローザまで男と親しく話し始める。わかってないのはミゼラだけ。なんとはなしにムカッとくる。
 ミゼラは、ポソリと小声でローザにたずねる。
「誰だっけ?」
「何言ってるの。シークス、いやグラップじゃない」
「へ!?」
 ミゼラはふたたびふりかえり、まじまじと、男の顔をながめる。
「・・・・・・そっか、髪伸ばしたんだ」
 以前であったときには、髪なんぞ伸ばしていなかったので、だいぶ印象が違っているが。
「あの後、ダーマで転職して修行しているときに勝手に伸びちまってな。いっぺん切ったんだが、やっぱり何と無く・・・・・・な」
「ふーん・・・・・・でもいまいちセンス悪い」
「ほっとけ。・・・・・・しかし、あんたたちも大変だな・・・・・・」
 ミゼラの言葉をグラップは軽く受け流すことにした。
「どうしてここへ!?」
 アルスの言葉にグラップはニヤリと笑った。
「ま、話せば長くなる」
 元盗賊の武道家はアレフガルドへ来た経緯を手短に話した。
「1か月前、海賊の家を出発しようとしたら突然老人が現れた。ゾーマを滅ぼすために異世界へわたった、っていった。アルスを見守りたいしミゼラに会いたかった。俺は迷わず老人からもらった特別なキメラの翼でギアガの大穴のある島にわたった。トレドとグレンとはラダトームまで一緒だった。それで昨日リムルダールであんたたちの話を聞いて追ってきたんだ」
 あれだけの戦いのあとにもかかわらず、グラップは呼吸1つ乱れてはいなかった。
「ともかくここはおれに任せろ!」
 ふたたび押寄せてきた大魔神の先鋒を斬りはらってグラップがいった。さっきの戦闘で、大魔神の体がぶつかった勢いで奥の鉄格子があいている。
「でも・・・・・・」
 とまどうアルスを「バカ野郎!」グラップがどやし付ける。
「あんた達が苦労してここまで来たのは、こんな雑魚キャラを相手にするためだったか!?そうじゃあるまい!」
 アルスとグラップは暫く見合ったが、「わかった!気を付けろよ!」アルスはそういうとホールの奥に向って走り出した。
「グラップもな!」
 エルトもそういって彼らがあとに続いた。
 そしてアルスたち4人を追おうとする大魔神たちに向ってグラップが物凄い勢いで突っ込んでいった。
 ドラゴンの爪を利用したグラップのドラゴンクロウが煌き、それを装備した腕がうなりをあげる。
 好い加減にケリをつけねぇと連中に追いつけなくなるな!
 左右から飛掛ってきた石像の巨人をかわしグラップは思った。
 まあ大したことないな!こいつら、全部片付ければケリがつく!
 グラップは事も無げに考えると、背後から襲い掛かってきた大魔神に強烈な蹴りを食らわせた。
 魔物の分厚い体が引き千切れ、石の体がホールの床に粉々になって散らばった。

あとがき
いよいよゾーマの城突入です。
やっと出せたグラップ。
これまであまり出てこなかった分、いっぱい暴れさせてあげました。
次回は城の奥へ。
色んなエビソードがいっぱいです。
※次回は9月1日更新予定です。
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