6 王者の剣(3) [DQ3-3]

6 王者の剣(3)


 彼らは、神殿の奥へ急いだ。神殿の内部は、石造りの橋をわたる前の建物と比べると、かなり大きくて広かった。内部には、ところどころ石像が飾られ、壁の大きな柱には、バラモス城でも見かけた不気味な像のレリーフが飾られていた。壁には、ところどころたいまつの炎が、ともされていた。さらに、城の宝物庫らしき場所があり、宝物庫のなかには賢者の石をはじめとする、大量の宝箱が眠っていた。以前ここは、精霊神ルビスを祀る神殿だったらしいが、そのときの宝だろうか。
 神殿の先に、下に続く階段があった。下への階段の近くに、オルテガがアリアハンの国王から授かった斧とともに、彼の遺体を手厚く葬った。斧は、いつも手入れを怠っていなかったらしく、今でも十分使えそうな、立派な武器だった。そして、オルテガの言葉通り、彼を乗越えるときが来た。アルスには、今迄、オルテガとの思い出は、これといってなかった。最初は、父の後を追う旅だった。だが、それはどんどん壮大なものになり、ついに、オルテガと同等のレベルまで辿り着いたといえる。オルテガは、もうアルスたちの心のなかに存在する。最期に見せた、おだやかな静かなかすかに微笑んで見えた顔とともに、ずっと。
 オルテガは、アリアハンにこの人ありといわれた、歴戦の勇者で、今迄アリアハン1いや世界1の勇気を持つ人物だとされてきた。彼は、バラモス討伐の旅に出る前は、何度も辺境の盗賊団の反乱を鎮圧し数々の戦功をあげたまさに伝説のような人物で、国王からは絶大な信頼を受け兵士からは尊敬され人々からは憧れの目で見られていた。並外れた巨体と鍛抜かれた強靭な筋力は、まるで鉄人のようで、立居振る舞いには隙がなく、やさしい澄んだ双眸は多くの人を引き付けた。彼は、アリアハンのほこりだった。そして、そんなオルテガの息子であることを、アルスもほこりに思っていた。
「父さん・・・・・・!」
 アルスは、オルテガの遺体を見ると、「そこで、眠ってて。見守ってて・・・・・・!かならずやこの手でゾーマを滅ぼし、この世界やもとの世界に、真の平和を取戻てみせる・・・・・・!あとで、かならず戻ってくるから」固く誓うと、アルスたちは、階段の通路に、悲しみを振り払うように、飛込んだ。
 あとには、焼け爛れたオルテガの遺体と、彼の使った斧だけが、寂しく残った。
 頼むぞ、アルス・・・・・・!お前には、果たさねばならんさだめがあるはずだ・・・・・・ゾーマを滅ぼす・・・・・・この世に、平和を取り戻すさだめが・・・・・・
 オルテガも、きっとどこかで、アルスたちを、見送っていただろう。
 そうだ、俺にはあるんだ。ゾーマを滅ぼすさだめが・・・・・・!
 階段の先の、広大な空間は、今迄とさらに違って静かで、どこかに悪魔が潜んでいそうな、巨大なトンネルだった。階段の近くには、バリアが張巡らされ、いかにもゾーマが待構えていそうな、ひっそりとした場所だった。バラモスのときは、熱い空気が漂っていたが、ここは逆で、むしろ涼しいくらいだった。暫く進むと、突然、前方の闇に、巨大な醜い祭壇を見つけ、その床には薄らとほこりが積っていた。彼らが祭壇に上ると、それを合図に、闇のなかに6つのたいまつが次々と燃えだし、祭壇の先の闇が晴れた・・・・・・。祭壇は、罠だったかもしれない。その奥から、闇が、アルスたちの方に迫ってきた。その闇から、おどろおどろしい声が、聞こえた。声からして、恐らく、ゾーマだろう。
「アルスよ!わが生贄の祭壇に、よくぞ来た!われこそは、すべてを滅ぼすもの!すべての生命をわが生贄とし、絶望で世界をおおい尽してやろう!アルスよ!わが生贄となれい!出でよ、わがしもべたち!こやつらをほろぼし、その苦しみをわしに捧げよ!」
 すると、魔物の鳴き声とともに、ほのかな紫の炎のようなものが、浮びあがった。炎は、どんどん大きく膨れ上がる様に見えた。だが、よく見ると、それは見覚えのある、紫の5本の長い首だった。
「あっ!?」
 真先に驚きの声をあげたのは、ローザだった。
 紫の鱗を持つキングヒドラが、冷酷な眸で、アルスたちを待構えていた。
(続く)

※次回は5日更新です。
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