そして伝説へ・・・ [DQ3-3]
そして伝説へ・・・
アルスたちがラダトームの城下町に凱旋したのは、勇者の洞窟を出発してから半日後の昼のことだった。
アルスたちがラダトームの城下町に入ると、知らせを聞いて城下町から駆け付けた大群衆が、城下町の通りを埋めた。そしてアルスたちを、歓びを呼ぶ声で出迎えた。
だが、ゾーマの最期の言葉が心に残り、アルスたちが城に近づくにつれて当事者のアルスは無意識のうちに次にすべきことを考えていた。と、「グラップ!?」城の入り口の近くにいるグラップとトレドとグレンを目ざとく見つけてエルトが叫んだ。
グラップは腕や足に包帯を巻いていたが、元気にトレドとグレンと一緒に両手を振っていた。
城の入り口へ行くと、真先にアルスたちはグラップたちと無事を喜び合った。
グラップは崩れ落ちた瓦礫の山で傷を負ったが、ゾーマの居城が崩壊する直前に間一髪逃げ出した。そして、闇の世界が光を取り戻してから5時間後、島へやってきたラダトーム城の偵察船に救助された。
城の謁見の間へ行くと、複数の兵士たちや吟遊詩人、踊り子がアルスたちの到着を待っていた。また、ラルス1世以下重臣や兵士たちの姿もあった。
アルスたちはグラップたちとラルス王の前に進み出ると、とたんに謁見の間のざわめきが小さくなった。
「しずまれ皆のもの!」
ラルス王の声にその場にいた全員が姿勢を正し、静寂に包まれた。
「アルスとその仲間たちよ・・・・・・!」
ラルス王は目を潤ませながら、万感の思いでアルスたちを見詰た。
特にラルス王に強烈な印象を与えたのは、アルスの凛々しい姿だった。最初にアルスと会ってから1か月あまりになるが、そのときよりもさらに逞しく成長していた。澄んだ涼しげな黒い、意志の強そうな双眸・・・・・・ラルス王は思わずその魅力的な顔に引込まれた。神々しく、光り輝いて見えた。まさに、ラルス王が理想とする男の像にそっくりだった。
「知らせを受け、そなたの帰りをまちかねていたんじゃ!よくぞ大魔王ゾーマを倒した!そしてよくぞ無事に戻った!心から礼をいうぞ!この国に朝がきたのも、すべてそなたの働のおかげじゃ!大魔王がほろびたためか、別の世界に通じていた穴はとじてしまったようじゃが・・・・・・この世界も、光ある一つの世界として歩み始めるであろう。すべてはそなたらのおかげ!アルスよ!そなたこそまことの勇者じゃ!」
ラルス王が、大粒の涙を流し乍らアルスたちの手を力強く握りしめた。また、そのまま、ラダトームの謁見の間で、続けて厳かな授与式が行われた。
「そなたにこの国に伝わるまことの勇者のあかし、ロトの称号をあたえよう!アルス、いや勇者ロトよ!そなたのことはロトの伝説として、永遠に語継がれてゆくであろう!」
ラルス王がアルスの「勇気の力」を永久に称えるために、アルスに「勇者ロト」の称号を与えた。
列を作っていた兵士たちが、懐から角笛を取り出す。彼らによって国歌の角笛のファンファーレが鳴り響いた。それに合わせて誰となく、どこからともなく国歌が沸起った。やがて歌声は謁見の間を埋めた人々に広がって、波のような大合唱になった。勿論、邪悪な存在などが割って入ることはなかった。
謁見の間では、踊り娘たちが華麗な舞を披露した。アルスたちが謁見の間から出ると、城中の人々が姿を見ようと列を作って並んだ。城の外でミゼラたちは、待構えていた人々や動物たちと平和になった世界を喜び合った。それらの姿をアルスは少し離れた場所で見守っていた。その日、城下町には紙吹雪が舞い、教会前の広場や通りを埋めた群衆たちの国家の合唱が夜が更けるまで続いたという。
かくして、ロトの称号をうけたアルスは、ここアレフガルドの英雄となる。
だが、祝いの宴が終わった時、アルスの姿はもはやどこにもなかったという。そして、その後のアルスの仲間たちの姿を見た者も誰もいない。
「勇者ロト」・・・・・・このときよりその名は、世界の創世記に邪悪な暗黒の大魔王から大地を守ったという伝説の勇者の名として伝わることになった。
その日以来、世界中の人々は親しみと尊敬を込め、アルスのことを「勇者ロト」と呼ぶようになった。
そしてまた、彼が残していった武器防具は、「ロトの剣」「ロトの鎧」「ロトの盾」「ロトの兜」として、聖なる守りは「ロトのしるし」として、のちの世に伝えられたという。
そして、伝説がはじまった・・・・・・!
あとがき
私、トロいんでサブタイトルの意味が判明したのはラストな人です。
それにしてもこの最後の流れは、思わず姿勢正してしまうようなカッコよさがあります。
DQシリーズのすべての始まりに違いない3にふさわしいラストだったんじゃないでしょうか。
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