5 旅立ち(2) [DQ4-1]

5 旅立ち(2)



 かくて、魔王によって統一された魔族たちが、地上の人間たちに齎した、1番目の災悪は、潰え去った。
 ピサロの手先は死に、その名を知られることもなかった幾多の魔物たちも、残虐非道な行いをその生命で贖うハメになった。
 バトランド王は御機嫌だった。広間で宴を開き、城の戦士たちが多数参加した。
 城下町では子供達を救ってくれた英雄を一目見ようと、男も女も喜んで集まってきた。王宮の戦士たちのうち、特に抜け目のないものは、子供達を助けたのは自分ということにして、手柄を譲ってほしいと半分冗談半分本気で言ったりもしたのだった。
 だが、ライアン自身の胸は晴れなかった。
 その肩は重かった。任務を全うしたことも、何の救いにもならなかった。
「おお、ライアン!」
 華やかな広間の中、国王は無事に戻ってきた英雄に、声をかけた。
「よくぞ戻った、待ち侘びたぞ!このたびの、其方の働、まことに見事であった。イムルの親子も喜んでおろう。其方のような、家来を持てた事は、わしのほこりだ!そうじゃ!褒美を取らせよう!何か、望は、ないか?なんでもよいぞ、言うてみい」
 ライアンは顔をあげ、「陛下。実は・・・・・・一つ、是非に聞いていただきたいお願いがございます」言った。
 国王は「おお。何なりと言うがよいぞ。其方の願いならば、どんな困難なことがあっても叶えてやろう」とにこやかに答えた。
「感謝します」
 だが、次に、戦士の口から出た言葉は、王の予測したものではなかった。
 国王は「何だと?旅に出たいと申すか!すると其方は、まだ子供である勇者を見つけ守りたいと・・・・・・。じゃが、ライアン。なにも其方が・・・・・・」と眉をひそめた。
 言い掛けて、国王は口ごもった。寡黙な男の瞳の中に、決して覆すことのできぬ決意が漲っているのが見えたので。
 ライアンは「それがさだめだと思います。大恩ある陛下の御許を離れたいわけではありません。けれども、わたしは・・・・・・うぬぼれかもしれませんが・・・・・・どうしても・・・・・・!」と言った。
 国王は「あい分かった!それが其方の望ならもう止めはせん!それ以上言わんでよい。大臣よ!」とライアンの手を押えた。
 国王の右隣に控えていた大臣は、国王に呼ばれて、大慌てで振向いた。
 持っていた王錫にもたれ掛り乍ら、国王は気だるげに言った。
「ライアンが出かけるそうじゃ。騒ぎにならんよう、そっと連れ出し、わしからの餞別として急ぎ、必要なものを手配せよ!食料、路銀。なんでもじゃ。このものが欲しいという倍ずつ持たせてやるがよかろう」
「はい。心得ました」
 感謝して、戦士が去ると、王はそっと吐息を洩らした。
「ライアン!気を付けて行くのだぞ!寂しくなるのう」
(続く)

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