第2章おてんば姫の冒険 1サントハイム(1) [DQ4-1]
第2章おてんば姫の冒険 1サントハイム(1)
昔 あるところにアリーナ姫という それは
おてんばな 姫が
いたそうだ
その国の 国王は
姫の おてんばさに頭を抱える毎日
ある朝 姫を
呼びつけたのだ・・・・・・
「アリーナ姫様!
お父上が 御呼びですぞ!」
「おおアリーナか!?じいから聞いたのだが力試しの旅に出たいと申しているとか・・・・・・」
父王の立つ黄金の玉座の前に立ち乍ら、アリーナは退屈と窮屈のあまり、そろそろ気が遠くなり掛けていた。
シックな落ち着いた青のドレスは胴がきつく、きちんと背筋を伸ばしていないと、肋骨に喰い込んで息も出来ない。髪もまた、おとなっぽく塔のごとく高々と結い上げられ、温かみのある大きな宝石飾りをジャラジャラと添えられているので、重さと引き攣れのために顔の皮膚が突っ張り、満足にまぶたを閉じることも出来ない。靴は踵が高く、拷問道具のように小さく、真直ぐに立っているだけでもジンジンと痛む。アリーナはドレスの内側に隠れ、靴先で脹脛を掻き乍ら、欠伸を噛殺していた。
もう。早く終わらないかな。
アリーナが吐息を洩らしたのを、父王は嗅ぎ付け、そっとたしなめた。
「娘や、何を不貞腐れておる。寝室の壁を蹴り飛ばすなど、愚か者めが」
アリーナは「でも、もっと強くなりたいんだもの」と語気鋭く言った。
「もーっと腕試しをしたいんだもの。御国のため、お父様のためにね!このお城から、外に出たことがないし。お城の、外の世界を見てみたいの」
父王は「ならぬぞっ。お前は女。しかもわが国の姫なのだぞ。怪物どもが住む外の世界へ力試しに出るなどこのわしがゆるさん!よいなっ!?この城から出てはならぬぞ。では下がってよい・・・・・・」と眉を顰めた。
どうにも拭い様もなく憮然としたままのアリーナは「はーい、お父様」というとプウと頬を膨らませた。
アリーナはまだ若い、15歳の美しい姫だ。
「うぉっほん。姫!少しは女らしくしていただかないと。お亡くなりになった御妃様はとても上品な方でしたのに。姫の教育係としてこのじいは陛下に合わせる顔がありませぬぞ」
しわぶきの声を洩らしたのは、アリーナの背後に大臣や兵士長、兵士らと控えていた、魔法使いのブライ。謁見の間の階下では、城の礼拝堂の入り口でアリーナのファンでもある若き神官クリフトが、心配そうな顔のまま、ゆっくりと天井を見上げた。
アリーナはサントハイム王の一人娘だ。王妃は、アリーナを生んですぐに、病で亡くなった。しかしアリーナはこの年齢になってもまだ、いいなずけを決めていない。
今日アリーナの寝室で物凄い音が聞こえた。ブライ達が駆け付けると、寝室の壁に大きな穴が開いていた。もともと城は古く、隙間風が絶えなかった。だがアリーナは何のケガもしていないし、魔物の姿もない。穴を開けたのは寝室の壁を蹴っていたアリーナだった。アリーナはなかなか城の外に出してもらえない状況にとうとう頭にきて、何度も壁を蹴っているうちに大きな穴が開いてしまったのだ。もともと壁は花崗岩の細工の所々、漆喰がボロボロになって、隙間を作っていた。押してみると、岩の一つがかすかに揺らぐほどだった。ブライは国王に報告し、アリーナは謁見の間に呼ばれたのである。
王は、自分の話を聞いている娘の様子を見て取って顔を顰めた。外に出たいとアリーナが反発するたびに何度も注意してきたが、効果があったことはない。それどころかどんどん悪化している。
うっそりと佇んだブライ、謁見の間にいないクリフトもまた、それぞれに眉をひそめた。姫の頭の中に、どんな無茶な計画が練られ始めているか、彼らはみな、はっきりと想像できたのだった。
(続く)
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