2章ー4 旅の扉(1) [DQ4-1]

2章ー4 旅の扉(1)

 大陸の南部に入ると、事物はアリーナがこれまで見知っていたものとは、大きく違ってきた。
 空気は乾燥し、朝夕にも決して激しくは冷え込まず、滅多に霧が生じない。見慣れぬ木々は、枝を低く広く伸ばして、丸みを帯びた葉をびっしりと茂らせる。おまけに、太陽は、海にではなく、連なった山のかなたに沈んでゆくのだ。
 生国の城では、いつも朝焼けに染まっていたあの東の山々が、このあたりから見れば北から西に広がっており、つまり、夕陽の舞台となるのである。頂上付近は雲に覆われていた。これがあの、険しく岩がちの、真黒い峡谷と純白に輝く雪冠の鋭いピークとを際立たしく対比させた山々と全く同じもの、ただそれを、裏から眺めているだけなのだとは。
 頭では納得がいったが、アリーナには、どうもしっくりこなかった。この地方の人間から見れば、彼女の見知っているほうが、なんとも意外な、裏の姿だと言われるのかもしれないのだが。
 山だけではない。
 鳥や獣たちは警戒心が強く、決して人間たちのそばに寄付こうとしなかった。足跡や糞を見かける事もあり、時には一瞬、姿が垣間見えることもあったが、みんな、目が合うや否や、大急ぎで逃げてしまう。食事の匂いをさせれば近づいてくるかと思ったが、山猫も狐犬も知らんぷり、パンを千切ってやっても、肉の脂防を投げてやっても、何ものも取りに来ないのだ。
 アリーナは「いじめやしないのに。全然馴れてないのね」と頬を膨らませた。
 と、「北方とは違って。このあたりは、餌が豊富なんでございますな。ま、いずれ、ひとの姿が見えなくなれば、置いていったものは、喜んで平らげるでしょうよ、」ブライは説明した。
 アリーナは投げようかどうしようか迷っていた手の中の堅パンを、「ちぇっ、可愛げのないわね。見てないとこであり難く食べてもらったって、別に嬉しくないわ」自分の口に放り込み、むしゃむしゃと噛んだ。
 山々が背後に遠ざかり、地平線と区別がつかなくなると、道らしい道がどこにも見当たらなくなった。ブライの持つ古い地図にも、ただ一面の平原として記載されている部分に到達したのだ。歩き続けるにも右も左も森で目標がないし、野宿する場所を探すにも、用足しをするにも、あまりにも漠としていて落着かない。ただ、その分、不意打ちをされる危険が少ないのはあり難くないこともなかった。
 藪や灌木を横切れば、メラゴーストやテペロに出あうこともある。
「メラ!」
 メラゴーストが呪文を唱え、火の玉をアリーナに飛ばして来た。アリーナは簡単にかわした。アリーナはフレノールで購入した鎖鎌で攻撃したが、メラゴーストは身体を震わせて攻撃をかわしてしまった。クリフトもフレノールで購入した鉄の槍でテペロを攻撃するが、テペロの体は堅い皮膚が覆っていてなかなか致命傷を与えられない。だがブライが唱えた。
「ヒャド!」
 ブライがうみ出した氷の刃はメラゴーストの体を包、すべて凍ったかと思うと氷の欠片と共に散った。アリーナとブライはクリフトの援護にまわった。
「ヒャド!」
 ブライの呪文でテペロの体は氷にすべて包まれ、氷ごと散らばった。
 乾いた砂地にはコドラやサンドマスターが潜んでいる。コドラは大きな体のわりに素早く、サンドマスターは独特な動きで不思議な踊りを踊った。アリーナはコドラの太い尻尾を狙って鎖鎌で攻撃した。クリフトは鉄の槍でサンドマスターを突き刺した。
「ヒャド!」
 ブライが呪文を唱えると氷の刃がコドラを包動きを封じた。そしてその体が氷の破片ごと飛散った。アリーナは鎖鎌でサンドマスターを攻撃した。
「ヒャド!」
 ブライの呪文でサンドマスターは氷の刃で動きが封じられ、凍った体は破片ごと散った。
 夜になれば、魔物の群れは力を増すように思える。3人は交替で番をしながら夜は眠り、陽のあるうちに出きる限り歩き続けた。クリフトの鉄の槍で下草や枯芝を薙ぎ払い、わざと足音高く、大声で軽快な歌でも歌い乍らゆけば、臆病な魔物の群れならあえて近づいては来ないらしいと3人は旅するうちに学んだ。
 そして、あまり退屈すると、アリーナはわざと魔物の群れを駆り立てては鬱憤を晴らした。
 星と太陽で方角を割りだし、修正しながら、彼らは、南へ、そして西へ歩き続けた。
 旅立った時に比べて、月が欠けている。湧水を見つけることが難しくなってきたため、彼らはみな、清潔とは言い難い状態になりつつあった。
 そんな夕方、彼らは、西の森を抜け砂漠に出ると北に人の集まる場所を発見した。
(続く)

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