2章ー4 旅の扉(4) [DQ4-1]

2章ー4 旅の扉(4)


 祠に隣り合って、東に宿があった。既に夜になっていた。
 せっかくなので、宿屋に泊まることにした。
 試しに場所を確認すると、主人は、「ここはエンドールの国。東に行くとお城があります。・・・・・・お泊りですか?それとも、ご休憩で?」と言う。
「フム。エンドールの城まで随分ありそうですな。ここで休んでいきましょう」
「そうね、泊まっていくわ。もう暗くなってるし。明日、出発しましょう」
 主人に部屋を案内してもらう時、アリーナは別の部屋から現れた泊まっているらしい背の高い戦士にぶつかりそうになった。
 素早く身を翻し、「失敬」声をかけた。
 兜に手をかけて、「こちらこそ」僅かに会釈をした相手が、ふと、からだを止めて、目びさしの間から、まじまじとアリーナを見詰る。
 アリーナは警戒し乍ら、「何?」見返した。
 男は「いや・・・・・・探し人かと思ったんだ」と薄く笑った。
「誰を探しているの?」
 男は「さだめの勇者を」と囁いた。
 アリーナも力を抜いて、「ゆうしゃ?それは、生憎だけど、人違いね。私はサントハイムの姫アリーナ。でも、今は、武道家のひとり。エンドールの武術大会に出場するつもりなの」微笑んだ。
 男は「姫君であられたか。知らんこととは言え、それは無礼仕った。私は東のバトランドの国の王宮に仕えるもの、山国生まれとて名乗るほどの氏はござらん、どうぞ、戦士ライアン、とお見知り置き下され。勇者を探して旅をしている。と、こんな話をしてもお主等には分かるまいな・・・・・・。失礼仕った」と片膝をついて頭を垂れた。
 アリーナは「そんな、堅苦しい。あなたは戦士、私は武道家。似た様なものじゃない。さぁ、ライアンさん、顔をあげてくださ・・・・・・」と慌ててライアンを立たせた。
 呼掛けた瞬間、アリーナは、奇妙な感触がした。痛いほどの懐かしさ、この上なく幸福な温かみ、変わることのない友情・・・・・・遥か未来の出来事を既に定まったこととして一つ一つ思い出すような不思議な錯覚・・・・・・に、彼女は思わず瞳を凝らした。相手も、怪訝そうに鼻をピクつかせている。間違いなく、彼女の声に、同じ種類の思いに囚われたらしい。
 低くしゃがれた、「姫君・・・・・・アリーナどの。重ね重ねの不調法、まことに申し訳ないが、どうにも言わずにいられん。一つお願いの儀が御座る。もしも、御旅路の途中で、勇者について何か耳にしたら、どんな些細なことでも構わない、是非、我が故国の城に知らせていただきたい。とても重要なことだ」思いつめたような声で、ライアンは言った。
 アリーナは復唱し、「勇者のことを耳にしたら。わかったわ。必ず、即刻、バトランド王に知らせるわ。安心して」まだなかば朦朧とし乍ら、うなずいた。
「礼を申す。貴女様の御武運をお祈り致す」
「ライアンも。早く御使命が達せられるように」
 ふたりは別れた。
 クリフトが「なんだか、ひょろひょろしたひとでしたねぇ。あのライアンという方。どこかでお会いしたような?いや思い違いですか」とちらちら降り返る。
 アリーナは「凄い人だわ。敵じゃなくて良かった。なぜかしら。あの人・・・・・・ライアンって人、凄く気になるわ。強そうだから?勝負してみたいから?いいえ違う。なにかが・・・・・・」と低く言った。
 相手の全身の発していた輝かしい気配、いつでも必殺の一撃を繰出すことの出きる準備を整えて蹲っている獣のような隙のなさに、アリーナの掌は、知らず知らずのうちに、じっとりと汗ばんでいるのだった。
「ほほう。あの戦士。なかなか腕がたちそうですな。フムフム。なんです、お気の弱い。こちらの大陸には、あのくらいの男は、大勢おるんやもしれませんぞぉ。特に武術大会にはの」
 だが、「バカねえ。あんなのがゴロゴロいてたまるもんですか。ライアンって人が武術大会に出るとしたら・・・・・・。あの人が相手なら気を引締めていかないと。油断してたら勝てないわ。そういじめないでよ、ブライ。覚悟はできてるから」アリーナは笑った。掌を腿に擦り付け乍ら。
 翌日の外は気持ち良く晴れ渡っていた。こちら側の祠は、細い岬の突端にあったのだ。波しぶきまじりの潮風に吹かれ乍ら、3人は、一路エンドールを目ざして歩き出した。

あとがき
砂漠のバザーから旅の扉での移動までです。
バザーは駆け足になってしまいましたが、ちゃんとやっておこうと思って書いてみました。
旅の扉を体験したサントハイム3人衆ですが、ひょっとしてクリフトの先祖は旅の扉(らしきもの?)を作れたんじゃないかって気がしています。
その辺を後々書くことが出きるかはまだわかりませんが。
あとライアンとの出会い。
私がゲームをプレイしていた時は夜にならないと現れないことを知らなくて、結局会えずじまいでした。
あとあと知ってちょっとがっかり。
というわけで情報をもとに書いてみました。
次回は2章のメインイベント(?)エンドールの武術大会。
全然差が縮まりませんが頑張ります。
※次回は1月1日更新予定です。
遅れてます。
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