3章ー5 トンネル(1) [DQ4-2]
3章ー5 トンネル(1)
魔物の群れは、なんだか、どんどん増えているみたいだ。でも、だからこそ、早く、たくさんの武器が必要なのだ。怪我をしても、疲れていても、トルネコは怯まずに働いた。
多くの経験と、破邪の剣を持つトルネコが一緒にいれば、旅しても、必ず無事に辿りつける。冒険好きで、世界の情勢を心配する若者達が、トルネコのもとに、大勢集まってきた。
そうなのだ。今では、トルネコが、親方だ。立派な御店の御主人様だ。そのうえ、戦士になりたいと思う少年達からも、尊敬されるような、歴戦のつわものなのだ。
思い出してみよう。レイクナバの街にいたころ、値段をつり上げるか値引きするかも、じっくり考えてみないと決めることの出来なかったトルネコが、今では、金貨60000ゴールドなんて、途方もないお金を集めなければことになっても、もう、少しも迷わなくなったのだ。
やがて、努力が実り、エンドールの兵士たちの武具をそろえたことで60000ゴールドの大金が、貯まる日が来た。トルネコは金を持って行き、翌日から工事を再開した。
工事の再開後エンドールではカジノも再開され、再び賑いを取り戻していた。トルネコはじぃんとしたが、心を鬼にして、ネネに言わなければならない。家に帰るとネネから明日の昼には洞窟のトンネルが開通することを聞かされた。
「・・・・・・まさか、あなた・・・・・・。せっかく御店を持ったのに、また旅に出るつもりなの?」
「ネネ。よく聞いてほしい。わたしにはまだ、やらなければならないことができたんだ」
ネネは仕事の手を止め、じっとトルネコの顔を見詰る。
「世界中に、今、危機が訪れようとしている。わたしは、いつかその時のために、天空の剣という伝説の武器を探しに行こうと思うんだ。そして心の正しい人を探して使ってもらいたい。明日、東へのトンネルが完成したら、また、旅に出るつもりだ。・・・・・・ポポロはもうこの街の生活に慣れたみたいだし。わたしのいない間はちゃんとお前を守ってくれるはずだ」
話を聞いてネネは大きな目を悲しそうに歪めた。だが、トルネコの真剣な顔付を見ると・・・・・・前よりずっと、しっかりした喋り方を聞くと、力強くうなずいた。
「店にやってくるお客さんたちから、わたしも天空の剣の噂を耳にしたわ。それを探すつもりね。わかったわあなた。わたしは、もう何も言わないわ」
ネネが囁く。うっとりとトルネコの瞳を見詰乍ら。トルネコは袖口で、「よし。ありがとう・・・・・・ほんとうに・・・・・・」急いで涙を拭った。今回はいつこの家に戻ってこられるかわからないし、これが最後の2人っきりの会話になるかもしれないからだ。
ネネは、ふいに泣きべそ顔になって、顔を埋めた。
「あなたは、いつも、なにか夢を持っていないと生きられない人・・・・・・。そんなあなただから、わたしも好きになった。・・・・・・時々は・・・・・・ああ、帰って来て下さいね。わたし、ちゃんと御店を守っているから。いってらっしゃい、あなた!わたしいつまでも、あなたのこと、待っているわ・・・・・・!」
(続く)
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