9 竜王の島(3) [DQ2上]

9 竜王の島(3)


「竜王!覚悟―っ!」
 さっそくアルスが大かなづちを構え、カインも魔道士の杖を構えていつでも呪文を唱えられる体勢をとった。
 同時に、ナナも魔道士の杖を構えて神経を集中させていた。
「ふっふっふ・・・・・・」
 相手は不気味な笑い声を上げると、「そなたらの力ではこのわしは倒せまい・・・・・・」とおどろおどろした低い声で言った。
「だが、わしもそなたらと戦うつもりはない・・・・・・」
「黙りなさい、竜王―っ!そんな手に乗らないわよっ!」
 ナナは、杖をかざしてにじり寄り、アルスとカインも攻撃の態勢をとった。
「わしは竜王ではない・・・・・・!」
「何ですってっ!?」
 呪文を唱えようとしたナナは、思わず呪文を中断した。
 その言葉に、勇者の子孫たちは唖然としていた。
「誰なの?竜王でないなら!」
 ナナが叫んで、杖の柄を握り替えた。
「そなたらこそ誰じゃ・・・・・・?」
 相手は変わらずおどろおどろした低い声で聞いた。
「ムーンブルク王女ナナよ!」
「俺は、ローレシアの王子アルス!そして・・・・・・こっちは、サマルトリアの王子カインだ!」
「そうか・・・・・・。勇者の子孫共か・・・・・・。よく来た、アルスよ。わしが、王の中の王、竜王のひ孫じゃ・・・・・・」
「ええっ?」
 とナナ。
「竜王の・・・・・・」
 とカイン。
「ひ孫だって!?」
 とアルス。
 全員、ものすごく驚いた。
「どうして竜王のひ孫がこんなとこにいるのっ?」
 ナナが聞き、「わかったぞ、またアレフガルドを支配しようとしてるんだなっ!」アルスが叫んだ。
「いや・・・・・・。幽閉されておるのじゃ・・・・・・。さまざまな神々からな・・・・・・」
「幽閉・・・・・・?」
 ナナがいい、男たちと顔を見合わせた。
「この島から勝手に動けないということじゃ・・・・・・」
 そういって、竜王のひ孫は、そのいきさつ、竜王がアレフガルドを侵略した経緯などを手短に、そしてその後について話し始めた・・・・・・。
 もともと神々の一族である竜神の子孫として生まれた竜王の一族は、人間を保護する神の1人として、天空に君臨するはずだったが、竜王の父親が誕生したとき、母である竜の女王はすでにこの世にはなく、竜王の父親は天上界で、エルフやドワーフ、言葉を話す動物たちにより、育てられた。
 ある日、まだ若い竜王の父親が、地上界に興味を持ち、内緒で地上界に降りある場所に向かったがそこは、かつて伝説の勇者が魔王を倒したときに、神から授かった光の玉によって邪悪な力が封印された場所だった。彼にそれを跳ね除ける力はなく、その後、彼とその一族はそれ以来邪竜として生きるようになり、その後、竜王の代になったところで、竜王はアレフガルドの地を征服し、(もはや現在では真偽は不明だが)竜の女王のものであるとして光の玉を奪い返そうとした。こうして、竜王は配下の魔物を率いてアレフガルドを侵略した。
 このことが、竜神の末裔としてあるまじき行為だとして、さまざまなほかの神々の怒りに触れた。
 竜王が100年前に伝説の勇者の血を引く勇者によって倒されると、竜神の末裔たちはさまざまな神々、特に本来竜神が仕えることになっている新世界を創造したといわれている創造神の裁きを受けた。そして、竜神の末裔たちは、その戒めとしてこの島に幽閉された。
 この島で、現在の場合は竜王のひ孫として、竜王の罪を償わなければならないという。
「だが・・・・・・」
 そういって、竜王の子孫はため息をついた。
「後4880年で、免罪される・・・・・・。さまざまな神々から罪を許されるんじゃ。そうすれば、最初はかつての力を失っているかもしれないがわしの一族は再び竜神となって、天上界に帰れる・・・・・・。それまでは、例えどんなことがあろうと、じっとこの島に閉じこもって、竜王の罪を償わなければならんのじゃ。もし、この島から1歩でも出たら、今度こそ永遠に天上界から追放されてしまうからな」
 そして、竜王のひ孫は3人を見つめると、「最近ハーゴンとか言うものが、偉そうな顔をして幅をきかせていると聞く。実に不愉快じゃ!そなたらハーゴンを倒しに行くのじゃな・・・・・・。もしわしに代わってハーゴンを倒してくれるなら、いい事を教えるがどうじゃ?」と、言った。
「そうよ!ハーゴンを倒しに行くわ!」
 ナナが力強く答えると、「そなたらのような、意外と心の狭そうな奴らに、頼むのは気が引けるのだが・・・・・・。ほほうやってくれるかっ・・・・・・」と竜王のひ孫はいった。
「何でもいいわ!ハーゴンをどうしたら倒せるか教えて!」
 ナナが尋ねた。
「では、5つの紋章を集めよ・・・・・・。さすれば、精霊の守りが得られるという・・・・・・」
「5つの紋章!?精霊の守りって・・・・・・?」
 竜王のひ孫はナナの問いに答えて話し出した。
「詳しくは知らんが、かつて精霊神ルビスが創り出した紋章だといわれている・・・・・・」
『精霊神ルビスの・・・・・・!』
 アルスたちは、声をハモらせ顔を見合わせた。
「具体的に、どういったものなのかは、わしもわからんがな・・・・・・。そして、それを集めてどこへ行くのかということも・・・・・・」
「でもすごい、今までぜんぜん情報がなかったからここまできた甲斐があったわ・・・・・・!」
 ナナはいった。
「だけど、どうして俺たちにそんなことを教えるんだ?」
 今度はアルスが尋ねた。
「ハーゴンのやり方が気に入らん・・・・・・。自分の力でなく自ら魔族と化して、世界を滅ぼそうとするその魂胆が・・・・・・」
「もうひとつだけ教えて」
 またナナが尋ねた。
「その紋章だけど。どこにあるか知らない?」
「かつてメルキドと呼ばれた街の南の海に、小さな島がある・・・・・・。先ずそこに行け・・・・・・」
「小さな島?」
 とナナ。メルキドとは勇者の伝説に登場したアレフガルドの城塞都市である。
「アレフガルドとムーンブルクのある大陸の中間にある島の大灯台じゃ・・・・・・。全部はわからんが1つはそこにあると聞いたことがある。紋章を集め、精霊の力を借りなければハーゴンは倒せまいぞ!おお、そうじゃ。勇者の子孫たちよ・・・・・・。そなたらにコレを進ぜよう」
 そういって、玉座の後ろの小さな棚から2つの宝箱を取って、アルスに差し出した。
 1つ目の宝箱にはアレフガルドを含む新世界すべてが描かれた世界地図、もう1つの宝箱には剣が1本入っていた。
 剣は鍔も柄も、ぼろぼろに錆び付いている。みすぼらしい剣だった。
「信じられないかもしれないが、コレはロトの剣じゃ・・・・・・」
『えっ?コレが?』
 3人は、声をハモらせ愕然として剣を見た。
「これがあのロトの剣・・・・・・?」
 アルスが、おもむろに手に取った。刃もぼろぼろに錆び付いている。
 一瞬手が離れなくなってしまったのかと思うほど、手がぴったりと柄に吸い付きそうな気がする美しい柄・・・・・・アルスの想像していたロトの剣はそういう気高くて華麗で美しい剣だった。その剣とは似ても似つかぬものだった。
 だが、よく見ると、鍔は不死鳥が翼を広げて飛んでいるロトの紋章を模ったものだ。
「もう長いときがたちすでに力を失い、ただのそこそこの切れ味のさびた剣になってしまった・・・・・・」
 竜王のひ孫は言った。
「だが、わしの力で、別の武器とあわせれば新しい武器として一応使えるようにはなるはずじゃ・・・・・・今のわしに出来ることはそれぐらいじゃ」
 それなら、ということでアルスは使えなくなってしまったカインの杖と合わせることを提案し、全員認めた。
 竜王のひ孫は、カインの杖とさびたロトの剣に不思議な何かの呪文を使った。すると杖と剣が白い光を放ち、光が消えるとロトの剣は消えていた。そしてカインはロトの剣と合わさった1本の別の杖を持っていた。以前の魔道士の杖と違って道具としてギラの効果を使うことは出来ないがそれを補うさっきのロトの剣と同じぐらいの物理的な攻撃力を持つ強力な杖が誕生した・・・・・・。
 勇者の子孫だからこそ、使いこなすことが可能な杖だ・・・・・・。
 勇者の子孫たちは竜王のひ孫にわかれを告げると、カインの呪文で脱出した。
「リレミト!」
 天井に地上に繋がる穴があったので、浮遊して脱出した。
(続く)

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