10 闇の世界(3) [DQ3-2]

10 闇の世界(3)


 その夜のこと・・・・・・。
 アルスたちが宿の食堂で夕食をとっていると、3人の人物が近付いてきて、「おお・・・・・・、ここにおったか・・・・・・」と、その中の1人がおだやかな口調で微笑んだ。
 話しかけてきたのは謁見の間にいた城の大臣で、ほかは城にいた荒くれとメイドだった。全員アルスたちと擦違ったりひと目見たとき、弾かれた様にアルスを見ていた人物たちだ。
「そなたらのことを話したら、異世界からやってきたということでどうしても気になるという者たちがいてな・・・・・・」
『えっ?』
 アルスたちは声をハモらせ驚いて食事の手を止めた。
「なぜそんなことを?どうして気になるの?」
 ミゼラが訝り乍ら聞くと、大臣は親し気にまた微笑んだ。
「異世界と聞いて、われらはそのどこから来たかもう1度知りたい・・・・・・」
「あなたたち、何の用っ!?」
 思わずミゼラが大声をあげた。
「まず、あんたたちがきたっていうのは異世界のどこの国だ?」
 大臣の後ろにいた荒くれはアルスをじっと見て尋ねた。アルスが答えた。
「アリアハンですけど」
「アリアハン!?どこかで聞いた名前だな。そうだ!そういえばそこから来たっていうおっさんがひとりいたな!ラダトームで、あんたによく似たおっさんと会ったことがあるんだ。そのおっさんも異世界からやってきたらしいっていってたからな」
「俺と・・・・・・?どんな人だったんですか?」
「ああ、見るからに素晴らしい魅力的なおっさんだった。そうだな・・・・・・、並外れた巨体に鍛え抜かれた肉体をした鉄人みたいなおっさんで・・・・・・、人の心をひきつける様な、なんともいえない優しい澄んだ目をしていた。俺は、ひと目でこれは只者じゃない、きっと大変な名のあるおっさんなんだと思った。内面から光輝くものが滲み出ていて・・・・・・神々しくすら見えた」
 アルスは父オルテガのことを思い浮かべ乍ら、妙に胸が騒ぐのを覚えていた。
 もしや・・・・・・!と、思わずにはいられなかった。アリアハンの国王からオルテガの死を告げられたときからずっと半信半疑だったが、さらにサマンオサでキングヒドラにオルテガを葬ったと聞かされてからはあきらめかけていたのに・・・・・・!そしてまた、ミゼラもアルスと同じ思いだった。
「そのおっさんは、ゾーマを倒すためにこれから西にすすんで大陸沿いに南からまわってみるところだといってた」
「名前はっ!?」
「その人の名はっ!?」
 アルスとミゼラが殆同時に立上って机から身を乗り出した!荒くれは2人の勢いに押されながらも、いった。
「たしか・・・・・・オルテガとか」
 アルスとミゼラは、話を聞いていたローザとエルトは一瞬自分たちの耳を疑った!だが、「父さんだっ・・・・・・!」とアルスが叫び、「オルテガさまだわっ・・・・・・!」とミゼラがアルスと思わず顔を見合せて叫んだ!
「父さんが生きてたんだっ・・・・・・!」
 なぜオルテガが異世界で生きているか見当もつかなかったが、アルスの胸に急に熱いものが込上げてきて、思わず涙を流した。
 アルスは何か話そうとしたが、涙で何も話せなかった・・・・・・!
「よかったね、アルス・・・・・・!」
 アルスの肩を強くつかみ乍らミゼラもまた涙を浮かべ、ローザとエルトも瞳を潤ませ乍らアルスを見ていた・・・・・・。
「オルテガさまのことを教えてくれない?」
 アルスの代わりに、ミゼラが尋ねた。
「私がオルテガさまのお世話をしたんです。そう・・・・・・あれはもうすぐ4か月前になる日のことでした」
 メイドが答えた。
「酷いやけどをしてお城の外に倒れていて・・・・・・。記憶をなくされたらしくついにご自分の名前以外思い出されなかったんです」
「記憶喪失に?」
 ミゼラがいって、アルスたちは顔を見合せた。
「ただアリアハンのオルテガとしか。全然聞いたことのない国だったんで、それで異世界から来た人だとわかったんです。オルテガさまはこの世界の人々が苦しんでいるのを知ると、2か月前に自分のやけどが治り次第そうそうに旅立たれました。オルテガさまはなぜかわかりませんが、わたし達を見てどうしても救わなければならないと感じたらしいんです」
「これまであまたの勇者が大魔王を倒さんと旅に出た。しかし帰ってきた者は誰もおらん。そうあのオルテガさえも・・・・・・」
 メイドも大臣も顔をふせた。彼らはオルテガはすでにほかの勇者たちと同じように死んだと思っているようだが、アルスたちはもう死んだとは思わなかった。今まで散々死んだと思っていたら実は生きていた。今だってどこかで生きていると思わずにはいられなかった。
 ラダトームを旅立つ前に、街でいろんな話を聞いた。北の洞窟の奥にはすべてのものを拒む底無しの罅割れがあるらしい。其れこそが魔王の爪痕で魔王がこの世界に現れたとき出来たらしい。マイラにいく前に、アルスたちはその洞窟に行ってみることにした。ラダトームから北に進むと、朝の時間から出発して夕方ごろに洞窟を発見して入った。その洞窟はなぜか呪文が封じられる不思議な洞窟だった。アルスたちは進むのに苦労しながらも袋の中にため込んだ薬草を使いまくって魔王の爪痕だという穴まで辿りついた。つまりゾーマの出現で残った被害のあとのようだ。ゾーマが現れたときの地震は、ラダトームの南とこの洞窟でつながって起こったかもしれない。穴はアルスたちが飛び込んでも異物を吐き出すように彼らを穴の外に吹き飛ばした。その洞窟の宝箱の1つに、盾が1つ入っていた。盾には見事な黄金色の紋章があった。不死鳥が雄々しく飛翔する黄金色の紋章が施してある立派な盾だ。不死鳥はやっぱりラーミアだろうか、ラーミアが卵からよみがえった時の姿に似ていた。そういえばラダトームで、城の宝だった武器や防具をゾーマが奪って隠してしまったという話を聞いた。またかつてこの城にあったという王者の剣、光の鎧、勇者の盾を集められればゾーマを倒せるかもしれないとも聞いた。この盾が恐らく勇者の盾に違いない。アルスたちは、急いで危険な洞窟から脱出した。
 洞窟を出たアルスたちは翌日さらに西に向かうと海が見えたところで北に進路を変え、夕方ごろに祠を発見した。そこはガライという吟遊詩人の家で、彼の両親が暮らしていた。
「息子のガライには困っていますのよ。歌を歌いながら旅をすると家を出たまま戻ってきませんの」
「銀の竪琴なら息子のガライが持っていたと思うが・・・・・・」
 そのガライにも、異世界を旅していればどこかで会えるだろうか。

あとがき
異世界に到着しました。
ここから先はいろいろ驚きの展開ですね。
実際にゲーム(リメイク版)をやっていたときは、後の伏線がすごいなぁと感じていました。
これからは主に異世界での冒険の始まりです。
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