7 闇の支配者(2) [DQ3-3]

7 闇の支配者(2)



 歪んだ空間は、すぐに元に戻った。空間が戻ったとき、アルスたちの体に残っていた吹雪や氷がすべて消え、冷気による痺れも感じなくなっていた!
 魔法使い系の最高位呪文、効果不明呪文パルプンテである。
 ゾーマは憎々しげに顔を歪め、ローザに向けて、凍える吹雪を吐く!凍える吹雪が空間に放たれ、戦いは、いつ果てるともなく続いた。
「ローザ!やめろ!」
 はっとようやくわれに返ったアルスは、ローザがこれまでのゾーマの攻撃と魔力の消費で酷く衰弱しているのに気付いて叫んだ。長引けば、ローザの方が不利なのはあきらかだった。
 全く正体不明で何が起こるのかわからない謎が謎を呼ぶ究極の呪文だった。唱えた本人にも、何が起こるかわからない、得をするのか損をするのかさえも謎だ。
 今回の効果も、得だったか損だったかはわからない。しだいに弱っていくローザの様子を見て、アルスは大きく息をついた。覚悟を決めた。
「父さん、母さん、見ててくれ!」
 ローザに向って攻撃するゾーマを正眼に見据えたアルスは、呪文の詠唱を始めた。
 アルスは、自分の王者の剣から放たれた風やエルトのバギクロスによる攻撃でゾーマにわずかだが効果があったのを見逃さなかった。バギクロスのような嵐で効果があったなら、アルスに出きるより強力なものは雷だろう。こうなると、より効果がありそうなのはライデインだが、通常のライデインでは大魔王ゾーマを滅ぼすことは出来なさそうだ。かといって、今のアルスに、連続して電撃呪文を使うだけの力は残されていない。たとえ自分の身がどうなっても、より強力な電撃でゾーマを倒すしかない。そう決心したアルスは、ゾーマに向ってゆっくりと歩き出した。
 デイン系は、基本は天界に存在するという世界を創造した神の力を借りるといわれている。しかし、1人で強力なものを使うときは、それだけでなくどんな願い事でも1つだけかなえてくれる神の竜の力も必要らしい。
 アルスの詠唱にあわせて、ゾーマの頭上で黒雲がたなびき、ゾーマの放つ凍える吹雪との間にパチパチと火花さえ散り始めている。それにゾーマは、気づいているのか。
 気合とともに、アルスはゾーマに向って呪文を唱えた!

 総ての力の源よ
 母なる無限のこの大地よ
 永久を吹き行き過行く風よ
 空を彷徨う雷よ
 天の頂きの夢の王
 願い叶えし神の竜
 盟約の言葉に拠りて
 我に従い力となれ

「ギガデイン!」
 ギガデインは術者を中心に、街の数区画に及ぶ超広範囲にわたって、雷の雨を降らせる呪文だ。手加減すればよほどのことがない限り一撃で死亡することはないが、よくてしばらく行動不能、悪ければ神経に障害が残る。術者を目の前にして、この呪文の範囲から逃れるのはほぼ不可能である。
 アルスが唱えると、ゾーマの頭上の雷雲を刺激し、幾条もの電光が魔王の身体をつなぎ火花を散らす。すると、ゾーマの凍て付く波動と凍える吹雪がアルスのギガデインに吸収されていった。そのままゾーマに炸裂する。
 凍て付く波動と電光、吹雪が複雑に混ざり合い絡み合い、この世のものとは思えない、凄まじい力を生出した!もう1度やれといわれても、もうできないだろう。
 爆音が響いた。今迄聞いたことのない、凄まじい音量だ。この世界だけでなく、アルスたちのいた世界にも、いや遠く天界にまで響き渡るような凄まじい爆音だった。
 やがてそれは静かにおさまった。
「く・・・・・・」
 そして。
 思わずアルスはその場に膝をついた。
 ボッ・・・・・・。
 前方で、何か小さな音がした。
「アルスよ・・・・・・。よくぞわしを倒した」
 ボッ・・・・・・。
 ゾーマの声がする。誉めてくれるのはうれしいが、今のアルスにそれを喜んでいる余裕は全くなかった。
 今の一撃で、アルスはほとんどの力を使い果たしていた。もはや小指の先ほどの火の玉を出す力さえ残ってはいない。動くことすらできない。
 ただ地面にへたり込み、肩で荒い息をするだけである。今攻撃されれば、まず即死だろう。
「だが光ある限り闇もまたある・・・・・・」
 ボッ・・・・・・。
 ・・・・・・またあの音だ。アルスには、音の正体がわからなかった。
 一体何の・・・・・・。
「わしには見えるのだ。ふたたび何者かが闇から現れよう・・・・・・」
 ボッ・・・・・・。
 ・・・・・・え?
 それはどういう・・・・・・。
 それでアルスはようやく顔を上げ、そして見た。
 大魔王ゾーマの体中に発せられた、無数の炎を。それらは、アルスたちが攻撃した部分から噴き出している。
 これは・・・・・・。
「だがそのときはお前は年老いて生きてはいまい。わははは・・・・・・・・・っ。ぐふっ!」
 空間が不思議な色に光出し、真白な光のなかで大魔王ゾーマの身体が炎となってあちこちに飛び散った・・・・・・。
 ゾーマが最後に残した不気味な予言にアルスはただ呆然と、笑いながら飛散った大魔王のいた場所を眺めていた。
(続く)

nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ゲーム

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。