第2章おてんば姫の冒険 1サントハイム(3) [DQ4-1]

第2章おてんば姫の冒険 1サントハイム(3)


「姫様が、再びお部屋の壁をお破りになったようです。すぐに城の外へ、御出になるでしょう」
「大儀じゃ」
 国王は手を振って、間者を下がらせた。国王その人しか顔を知らぬ、極め付けの兵士である。ひっそりと明りを落とした謁見の間には、国王と、年老いた魔法使いのみが残された。
 王は椅子の背にもたれて、「のう、ブライ。どうして、あれは、ああ聞き分けがないのだろう。行きたがるのはわかるが、城の外では、多くの人々が、凶暴な魔物によって苦しい生活を送っているというのに。死と隣り合わせなのがわかってるのか」重苦しく息をついた。
 ブライは「若さ、で御座いますな。おそれ乍ら陛下、このまま姫を行かせて差し上げてはいかがかと。ここまでなさるとは、姫の御決意も相当固いものと思われます。城の外の人々の生活の厳しさをその眼で知ることも今の姫には必要かと、このままでは一生おてんばは直りませぬぞ」と笑って肩を竦めた。
 国王は「其方がいかん。教育係であるはずの其方がそうでは、あれが素直になるわけがない!」と眉を顰めた。
 ブライは「冤罪で御座います。姫の御性格はこれすべて、血のなせるわざ。あの頑固も、一筋縄でゆかぬところも、陛下御自身にクリソツで御座いますわい。おまけにお亡くなりになった御妃様も、いとも淑やか乍ら、あれで、なかなか情のコワいおかたでいらっしゃいましたしのう・・・・・・いや、わしなど、あのおかたの優しう微笑みながらの鋭い毒舌に、何度グッサリ急所を貫かれましたことか」と頭を振った。
「少し口を慎もうという気にはならぬものか。わしは老いたる其方を敬うとるに。其方はいささか無礼ではないか」
「ひとはみな真実には縛られるもの。真実の前には、無礼も非礼もありませぬ」
 王は肘掛にもたれ拳でこめかみを支えるようにし乍ら、目をそらした。
「あのおてんばには2人分幸せになってもらわんとな。さあ行け」
「しからば」
 そっぽを向いたまま、「くれぐれも、頼むぞ」王は小声で囁いた。
 ブライは頬を歪めるようにしてニヤリと笑うと、会釈をし、出て行った。
(続く)

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